日本共産党

2001年9月9日(日)「しんぶん赤旗」

奨学金の制度と憲法の理念の関係は?


 〈問い〉 奨学金制度を整備することは、憲法の精神でもあると聞きました。どういうことですか。(東京・一読者)

 〈答え〉 憲法は、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」(第二六条 教育を受ける権利)と定めています。この条項にもとづき、教育基本法は「教育の機会均等」を定め、「人種、信条、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」「国及び地方公共団体は、…経済的理由によって修学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない」(第三条)としています。

 親などの経済力により教育の差別が生じないよう、公的な奨学制度を保障することが国の責務とされているのです。

 ところが現実は、日本の大学の学費は欧米諸国と比してきわめて高額であるにもかかわらず、奨学金制度は最低といえる状況です。政府の奨学金(育英奨学金)は、「優れた」学生・高校生で経済的な困難を抱えるものを対象とするため、成績・家計基準によって、多くの学生が門前払いとなっているのです。フランスでは学費は無償、その上で生活費として給与奨学金が支給されています。高校でいえば、奨学金は給付制が欧米諸国の常識です。

 長引く不況のもと、親の失業などで学費が払えず大学や高校を退学せざるをえない、生活費や学費のためアルバイトに追われる等々の事態が広がっているだけに、奨学金制度の拡充がなんとしても必要です。

 ところが小泉内閣は、奨学金業務を行う日本育英会を民営化することまで検討しています。これは、奨学金を銀行等が扱う教育ローンに変質させるもので、収入が少ない家庭では貸与を受けられないなど、奨学金制度の根幹を掘り崩すものです。憲法の精神にもとづき、希望者全員への無利子貸与、給与奨学金の導入など、抜本的な制度の充実こそ求められます。(田)

 〔2001・9・9(日)〕


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