2000年8月7日(月)「しんぶん赤旗」

 従軍慰安婦問題での下関判決とは?


 〈問い〉 日本共産党が、従軍慰安婦問題解決促進の法案提出を発表した時、下関地裁の判決に言及していました。この判決は、どういうものなのですか。(北海道 S・K)

 〈答え〉 下関判決は、九八年四月二十七日、山口地裁下関支部が、従軍慰安婦三人の訴えにたいし、国会議員が法律作成の責任を果たさない(立法不作為)のは違法だとして、国の賠償を認めた判決をいいます。戦後補償を求めた訴訟で、原告が一部勝訴した初めての判決として注目されました。

 政府は、従軍慰安婦について、九三年の河野官房長官談話で、国の関与と一部強制があったことを認めましたが、賠償問題は対日講和をとりきめたサンフランシスコ条約や二国間条約で決着済みとの態度で、法的責任を認めず、裁判所も、国会の政策判断にゆだねるとの立場(立法裁量論)から、賠償責任を認めずにきました。

 判決は、従軍慰安婦制度は徹底した女性差別、民族差別で、女性の人格の尊厳を根底からおかし、民族の誇りを踏みにじるもの、日本国憲法一三条の認める根幹的価値にかかわる基本的人権の侵害だったとし、これは過去の問題ではなく現在でも克服すべき根源的人権問題だと認定。現政府と国会は慰安婦とされた女性に配慮し、補償すべき立法義務があったのに怠り、「多年にわたり従軍慰安婦を放置し苦しみを倍加させて新たな侵害を行った」としています。その上で、九三年の官房長官談話等で国の賠償立法義務が明確になったが、合理的立法期間の三年が過ぎても国会議員は立法をしなかったと指摘。その国家賠償として国は元従軍慰安婦に各三十万円の支払い義務があると認定しました。

 賠償額の低さは、元慰安婦を失望させましたが、海外の運動・支援団体の中から「日本国政府が法的賠償の責任をもつ事を明示した点に大きな意味がある」(挺身隊問題対策協議会)等と評価する声もあがっています。

 日本共産党は、従軍慰安婦への個人補償を早くから主張(九四年「侵略戦争の反省のうえにたち、戦後補償問題のすみやかな解決を」など)。今国会に提出した従軍慰安婦問題の解決促進法案は、下関判決以後の、立法による解決を求める声と運動の広がりにこたえるものです。(春)

 〔2000・8・7(月)〕


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