2001年6月9日(土)「しんぶん赤旗」

 弁護士費用の敗訴者負担をどう見る?


 〈問い〉 司法改革の問題に関連して、弁護士費用の敗訴者負担ということが論議になっています。日本共産党はこの問題をどう見ますか。(東京・一読者)

 〈答え〉 政府の司法制度改革審議会で、裁判で負けた人が相手方の弁護士費用を負担する制度の導入が論議になりました。その理由は、弁護士費用が高額のため訴訟に踏み切れないことがないようにする、というものです。

 日本共産党は、弁護士費用を敗訴者に負担させる制度はかえって訴訟を委縮させることになるため、反対です。

 裁判を起こすには、訴えの対象とする金額に応じた印紙代などの訴訟費用と、弁護士に依頼したときの弁護士費用として着手金と報酬などがあります。弁護士会の規定で、訴訟の経済的利益が三百万円以下の場合、着手金八%、報酬金一六%の範囲内とされています。現在、原則として、訴訟費用は敗訴者が負担し、弁護士費用は勝敗にかかわらず各自で負担することになっています。

 いま国民が裁判から遠ざけられているのは、費用が高く、年月がかかりすぎ、しかも裁判所が国民の訴えをよく聞いてくれないところに主な原因があります。資力の乏しい人への法律扶助制度もきわめて不十分です。

 さらに、公害、水害、医療過誤、変額保険などの訴訟では、道理はあっても証拠は相手方にあるため、行政や企業の責任を追及し、勝利するには大変な苦労が強いられます。最初から勝てる保障がなく訴訟を起こす場合も少なくありません。

 もし弁護士費用の敗訴者負担制度を導入し、自分の弁護士費用だけでなく敗訴して相手方の弁護士費用まで負担することになったら、企業は経費として扱えますが、経済力のない国民は生活費から賄わなければなりません。

 審議会には、敗訴者負担に反対する多くの意見が寄せられました。審議会は明確な結論を出しませんでしたが、この問題は裁判が行政や大企業に顔を向けるのか、それとも国民の方かを問う試金石です。(光)

 〔2001・6・9(土)〕


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