中小企業対策の強化が世界の本流だとは?



 〈問い〉 世界では、中小企業の役割を評価し、中小企業対策を強化する方向が本流だということですが、具体的にはどういうことですか。(大阪・一読者)

 〈答え〉 近年、ILO(国際労働機関)、OECD(経済協力開発機構)などの国際的機関や欧米諸国では、中小企業が果たす役割を見直し、その振興のための対策を強化するという考え方や政策が本流になっています。

 たとえばILOは、「中小企業の促進に関する決議」(一九八六年)、「自営業の促進に関する決議」(九〇年)、「中小企業における雇用創出・奨励のための一般的条件」(九七年)など、中小企業にかんする一連の決議を採択。このなかで、経済成長や地域経済の発展、雇用創出などに果たす中小企業の重要な役割を強調し、中小企業を「社会進歩」の担い手だと指摘しています。また、政府が果たすべき役割を重視し、中小企業の「成長に役立つ環境を築き、中小企業の創出、存続、発展を促進する奨励策」を求めています。

 先進資本主義国が加盟しているOECDは、九六年に、「中小企業:雇用、技術革新、経済成長」を加盟国に勧告。そこでは、EU(欧州連合)加盟十二カ国を対象とした調査・分析で、中小企業の売上高の伸び率が大企業の売上高より高ければ高いほど翌年のGNP(国民総生産)成長率が高くなることを統計的に実証し、経済成長の面でも、中小企業が先進国経済の主人公であることを明らかにしました。

 連邦政府とすべての州政府が参加して「中小企業週間」を毎年おこなってきたアメリカは、九七年に中小企業法を改正。「国家安全保障と経済的繁栄は中小企業の現実的能力および潜在的能力が奨励され発展されることによってのみ実現される」などと中小企業の役割を高く評価し、他国との貿易交渉の際、商務省は中小企業に不利な貿易交渉をしてはならないことを義務づけました。また、すべての州の金融機関に零細企業にたいする融資実績を毎年報告させ、零細企業への融資に熱心な銀行かどうかを実名で公表するといった「地域再投資法」も施行しています。(理)

〔1999・12・9(木)〕


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