日本の憲法は生活権保障でも光るとは?


 〈問い〉 日本国憲法は生活権の保障でも世界的に見て値打ちが光っているとのことですが、具体的に教えてください。(北海道・一読者)

 

 〈答え〉 憲法二五条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(第一項)「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」(第二項)とのべ、国民の生活権、生存権を基本的人権として保障しています。

 国民の生活権は、世界人権宣言や国際人権規約でもうたわれるなど、国際的に広く認められていますが、憲法の条文にそういう条項を持つ国は多くはありません。サミット参加国を見ても、日本以外に生活権を条文としてもつ国は、イタリアぐらいです(イタリア憲法三八条は、「労働の能力をもたず、生活に必要な手段を奪われたすべての市民は、社会的な扶養と援助を受ける権利を有する」等々と規定しています)。憲法の生活権保障の規定は、生活を守り、社会保障を充実させていく国民の要求と運動のよりどころともなっています。

 一方、自民党政治は、日本の経済力の発展を国民生活向上に向けることをせず、対米追従と大企業の利益優先を進め、国民生活を圧迫し、国民の生存権を脅かしてきました。過労死さえ生み出す長時間・過密労働など”ルールなき資本主義”といわれる欧米にも例をみない大企業の横暴を野放しにし、年金、医療をはじめとする社会保障制度の破壊・改悪も次々におこなってきていること等々がそれです。

 日本は、このように憲法の明文の上では、すぐれた規定をもちながら、政治の実態は、憲法から大きく遅れ、逆行さえしてきました。

 「憲法は古くなった」といって時代に合わないかのようにいう議論もありますが、生存権規定を含め、日本の憲法は世界の中で光る先駆的条項をもっています。いま大事なのは、この憲法をないがしろにする遅れた政治の現実を正し、政治を憲法が求める方向に近づけていくこと、憲法の民主的な条項を名実ともに実現させていくことです。(龍)

〔2000・1・23(日)〕



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