小中高生への奉仕活動の義務化をどう見る?

2000年 9月 28日(木)「しんぶん赤旗」


 〈問い〉 いまの教育の中に奉仕活動を義務づけるべきだという意見があります。どう考えたらいいですか。(青森・一読者)

 

 〈答え〉 奉仕活動の義務化という考えは、首相の私的諮問機関・教育改革国民会議の最近の報告(中間報告)が打ち出したものです。小中学校で二週間、高校で一カ月の共同生活などによる奉仕活動をおこなうことを提案しています。これは、子どもたちのボランティア活動とは、異質のもので

す。

 「人間性豊かな日本人をつくる」ためという理由があげられていますが、奉仕活動義務化の提唱者である教育改革国民会議の曽野綾子委員は、月刊誌で、奉仕活動とボランティアは「別物」だ、「国家から、義務教育とか健康保険とか国民年金を受け取る反対給付として、義務としての奉仕活動」を強調しています。報告のいう奉仕活動とは、国民を国家への奉仕に動員しようとするもので、森首相のいう「滅私奉公」と軌を一にします。

 子どもたちがボランティア活動などの体験をもつ機会をつくることは、知育・徳育・体育を含めた調和のとれた発達のためにも、自然に親しんだり、社会的関心を高めるためにも、意義あることです。阪神・淡路大震災の時の子どもたちの体験もこのことを示しています。

 ボランティア活動は、自主的、自発的にとりくんでこそ子どもたちのためになります。奉仕活動を義務づけるなど、上から強制しても、人間性を豊かにしたり、自主的精神を育んだりすることはできず、むしろ教育に混乱をもちこむだけです。

 人間性豊かな日本人をつくるためには、「個人の尊厳を重んじ」平和で民主的な社会の形成者の育成をうたう教育基本法の精神をふまえ、生かすことが大事です。そのために、いま重要なのは、国連機関が異例の勧告を出すほどにゆがんだ日本の「極度に競争的な教育制度」を改め、ゆきとどいた教育のもとで、子どもたちがのびのびと育つことができるようにする教育制度の改革です。(龍)

  〔2000・9・28(木)〕

 

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