公共投資拡大の圧力で米国の利益は?

2000年 9月4日 (月)「しんぶん赤旗」


 〈問い〉 六百三十兆円の公共投資計画の背景に、アメリカの圧力があったということですが、アメリカにとってどんな利益があるのですか。

(群馬・一読者)

 

 〈答え〉 政府の公共投資基本計画(九五年度から十三年間に六百三十兆円)がつくられるおおもとには、日米間の貿易不均衡問題などを協議する日米構造協議があります。

 日米の貿易不均衡(恒常的な日本の黒字とアメリカの赤字)は、双方にある原因(日本側は、低賃金・長時間労働・下請けいじめで輸出競争力をつける大企業の体質、アメリカ側は、軍事優先や多国籍企業の展開による国内産業の停滞)を対等の立場で協議し、解決すべきものでした。ところが九〇年二月の協議でアメリカ側は、不均衡を日本の一方的責任で是正し、GNP(国民総生産)の一〇%の公共事業をおこなうよう迫りました。公共投資を拡大して内需を増やせば、アメリカからの日本への輸出も増え、不均衡の是正につながるというわけです。

 この投資拡大要求の背後には、「日本は貯蓄率が高く、投資に比べ貯蓄が大きすぎるから貿易収支が黒字になるのだ」という米側の主張(貯蓄・投資バランス論)がありました。また、アメリカ側が民間投資より、公共投資の拡大にこだわったのは、「輸出につながる産業分野への投資より、公共分野に投資する方が賢明」(マコーマック米国務次官=当時、八九年日米次官級経済協議)という思惑が働いていたからです。そのほか、公共投資拡大要求には、日本の大規模公共事業へ米企業を参入させる思惑もありました。

 こうして、国民の必要からではなく、日本のゼネコンとアメリカの利益をはかる“総額先にありき”の公共投資基本計画がつくられました(当初の計画は、九一年度から十年間で四百三十兆円。その後前記のように、期間を延長し二百兆円を積み増し)。

 政府は、国民の批判を受けて公共事業の「見直し」を打ち出していますが、二〇〇七年までに六百三十兆円を使い切るという公共投資基本計画はそのままです。政府が抜本的に見直すというのなら、計画は撤廃すべきです。 (

〔2000・9・4(月)〕

 

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