2000年3月26日(日)「しんぶん赤旗」

 不妊治療への保険適用をどう考える?


 〈問い〉 不妊治療で通院していますが、保険がきかず多額の費用がかかります。不妊治療への保険適用について、日本共産党はどう考えますか。(東京・一読者)

 〈答え〉 不妊治療については、現在、ほぼ三十万人近い人びとが何らかの治療を受けていると推定されます。不妊治療のうち、ホルモン異常や子宮、卵管の機能障害などを原因とする場合の治療は、いまも健康保険が適用されています。しかし人工授精や体外受精など、受精を人工的におこなう場合は保険適用外となり、全額自己負担です。

 たとえば体外受精をおこなう場合では、一回数十万円の費用がかかります。一回で妊娠できるとは限らないため、くり返し実施するケースが多く、厚生省の調査でも不妊治療を受けている人の約四割が、治療費に百万円以上かかっているといいます。不妊治療をうけることによる経済的負担はたいへん重く、保険適用をという願いは当然だと思います。

 日本共産党はこうした声にこたえ、今日の医学の到達点をふまえた一定の基準、条件にもとづく保険適用を検討すべきだと考えます。

 不妊治療を受ける人の間では、治療内容についての情報不足、治療による肉体的、精神的苦痛への悩みが共通して出されています。カウンセリングなど精神面での援助も遅れています。保険適用の検討を契機に、その現状を改善し、医学的研究の促進と、技術の安全性の確保、患者の立場に立った情報提供などの条件整備をすすめることが必要です。

 同時に、人工授精や体外受精などの生殖技術の発展とその適用は、社会生活や人類の未来に大きな影響を及ぼす問題でもあります。ヨーロッパなどでは生殖医療や生命倫理にかんする検討や法整備がすすんでいます。日本では生殖医療についての本格的な議論が遅れたまま、既成事実が先行している現状があります。医学的な研究とともに、国民的な議論と合意の形成が不可欠です。

 夫婦外から卵子や精子の提供をうける生殖医療については、生まれてくる子どもの権利、親子関係などをめぐって、さまざまな議論があります。社会的、法律的、倫理的影響などについて多面的な検討が必要でしょう。(玲)

〔2000・3・26(日)〕



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