排水管の水漏れで改修へ 調査・診断はどうすれば

回答者 一級建築士 新井啓一さん(生活建築研究所)


 

 築二十年の四階建て十六戸のマンションで自主管理です。今度、私が管理者を務めることになりました。先週、一階の天井の排水管から水が漏れて水浸しになりました。販売会社に聞くと、そろそろ排水管の大改修をした方がよいというのです。排水管の改修をするためには、診断が必要だと思いますが、どのようにしたらよいでしょうか。(愛知県・A子)


 新井 排水管の漏れはどうしましたか。
 ――とりあえず応急処置はしました。

 新井 今回が初めてですか。給水管の方は。
 ――排水が漏れたのは初めてで、天井部分から壁にかけてです。給水管は数年前に修繕しています。

 新井 設備管は日常生活に欠かすことができないだけに、その維持管理は重要です。これまで日常的に高圧水洗浄するとかは。
 ――洗浄は年一回していました。

 新井 設備管の改修は、(1)多くの出費を要する、(2)今後の修繕計画にも影響する、(3)工事に伴う日常生活への影響が大きい、(4)居住者間の合意形成等の課題に総合的に取り組むことになりますので、慎重に進めることが求められます。
 とりわけ排水管の場合はやり替えになる率も高く、その際、排水管はこう配を必要とするだけに給水管に比べて配管系統の変更についての制約があります。
 調査・診断は、これまでの保守管理記録や建設時の竣工図などの記録をもとに、管種は何か、全体の配管状態と今回の漏水個所の状態はどうなっているか、必要な場合は居住者へのアンケートなどの予備調査から始めます。その結果から的確な診断法を選択し、精密な診断を行うという二段階になります。
 診断は、検査機器を用いる非破壊検査(管工事を伴わない)と配管の一部を切り取って分析する方法の二つがあります。前者には、(1)ファイバースコープを挿入し、管内を見たり写真を撮り状況をつかむ、(2)X線や超音波を利用して主に膜厚や材厚を測る、(3)水質や付着物質を分析するなどの方法があります。
 普通、非破壊検査のみでは改修工法の選択に必要な情報量も限られるので、より正確につかめる後者まで行うことが多いようです。
 ――診断はどんな所に頼めばよいですか。

 新井 調査・診断は居住者の立場で改修事業全体を総合的にアドバイスしてくれる第三者の専門家(マンション管理士や設計事務所)を選択し、パートナーに据えることをお勧めします。
 そうすることで、複数の業者から見積もりを取り、工事内容を押さえた上で金額を安くできる可能性が大きくなります。さらに工事中の点検やその後の管理を含めて選択できると思います。
 ――診断費用は。

 新井 図面や記録の有無、建物の状況、調査個所数でも違ってきます。図面や記録もそろい、かつ調査個所の選定も容易にできる場合で、調査五カ所程度のうち一カ所分が、非破壊検査(2)で三〜五万円、サンプル取り出し検査は十〜二十万円くらいでしょう。


( 2002年07月17日)



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