所有権移転登記手続き前 不動産会社が倒産した時

回答者 弁護士 山下基之さん (東京合同法律事務所)


 

新築の分譲マンションを購入します。現在、手付金を百九十万円支払い、来月の内覧会の後に住宅金融公庫のローンと、自己資金六百六十万円を支払うことにしています。それを払い次第、所有権移転登記手続きになりますが、心配なのはこの間に売り主の不動産会社が倒産したときはどうなりますか。(東京都・I子


山下 法務局で所有権移転登記の受け付けが済んでいれば、破産手続きによってもあなたの所有権は失われません。管財人に対して取り戻し権を行使することになります。
問題になるのは登記手続き以前に破産宣告がなされた場合です。
手付金のみを支払った状態で破産宣告があると、この売買契約は、倒産した不動産会社の管財人によって、契約を解除するか、維持するかの選択がなされます。
契約が維持された場合には、宣告前と同様に、あなたは残金を支払い、マンションの所有権を取得して、登記手続きができます。
逆に管財人が契約を解除した場合には、あなたは残金の支払いは免れますが、手付金の返還は破産手続きによってなされます。
手付金の返還請求権は、財団債権といってほかの債権よりも優先的に支払われます。ただし、契約上違約金の定めがあった場合の違約金請求権は、一般の債権(破産債権)と同じ扱いとなります。
残金も全部支払っていた場合で登記をしていませんと、あなたの権利は一般の破産債権となり、破産手続きによりほかの一般債権者と同様に債権額に応じて支払われるにすぎません。

――ということは、所有権移転登記前に倒産すると面倒なのですね。
山下 そうですね。また手付金だけ支払っていたほうが、残金全部を支払った場合よりも保護されることになりますね。自分の権利を守るためには、残金の支払いは登記手続きと同時にすべきだということです。

――管財人が契約を解除するか維持するかの選択ができるということですが、これはどうやって確認するのですか。
山下 管財人から連絡がきます。
この連絡がこない場合には、管財人に対して相当の期間を定めて、いずれを選択するか催告ができ、回答がない場合には解除したものとみなされます。
ただ、解除されるよりはマンションの所有権を取得したいということであれば、管財人と至急連絡をとって、契約を維持するよう交渉すべきです。


(2002年06月19日)



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