大規模修繕に参考になる工事見学会はどんな内容

回答者 マンション管理士 千代崎一夫さん(ハウジングケースワーカー・住まいとまちづくりコープ)


 

 建築後十五年で六十戸のマンションに住んでいます。管理組合がこれまで補修などをしてこなかったせいか建物が傷んできました。工事の費用もたまっていませんし、理事会ではまだ修繕の議論がされていません。しかし住民の間では、“修繕をしなくては”という声が出始めており、理事会に提起していきたいのです。
 工事見学会に行くと参考になるという人がいるのですが、見学会というのはどんな内容でしょうか。(埼玉県・W生)


 千代崎 マンションの大規模修繕をするのに見学は本当に参考になると思います。
 傷み具合の比較、現実にかかった工事費、進めていった過程などを工事中もしくは工事完成後の見学でかなりつかめます。

 ――具体的には。
 千代崎 見学会のプログラムは、大まかにいえばマンション概要、工事内容、工事までの経過、工事中のエピソード、管理組合からの感想やアドバイス、質疑応答と工事の現場を見ることだと思います。
 この「マンション概要」というのは建築何年か、何階建てか、何世帯でエレベーターの有無、改修歴、改善歴などを表わしたものです。
 「工事内容」は屋上その他の防水、内壁、外壁、廊下、階段、外構、電気設備、給排水・換気設備などの工事をしたい個所をいいます。
 「工事までの経過」は大規模修繕工事を準備する時期から管理組合の動きをまとめたものです。合意の形成や工事会社の選択までの経過を記録します。

 ――すると、苦労した住民の様子も聞けるのですか。
 千代崎 そうです。
 「工事中のエピソード」というのは、管理組合の悩みや困ったことをはじめ、足場を掛けて改めて新たな傷みが発見されて追加工事の費用がかかったとか、マンションカラーを決めるのに時間を掛けたなど、様々なことがあります。
 また「管理組合からの感想アドバイス」では修繕工事にいたる過程で起きた出来事、工事終了後に住民がどんな満足・不満足感を持っているか、工事費のため方とかローンを組むときに合意をどのようにして作ったかなども聞くことができます。
 さらに「質疑応答」では、疑問点を含め説明を受けることができます。
 これらを組み合わせたものが理想的な見学会です。

 ――ほかのマンションを知る絶好の機会ですね。
 千代崎 工事をする一年前にほかのマンションの話が聞けたら役立つと思います。
 マンション同士で交流できるところが十カ所あって、大規模修繕が十年に一度あれば、年に一回は見学できることになります。
 工事見学はほかのマンションとのつながりのきっかけになります。ぜひ積極的にほかのマンションに出掛けてみてください。


( 2002年04月17日)



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