高齢者に不自由な階段をスロープに改修するには

回答者 一級建築士 新井啓一さん (生活建築研究所)


 

 築二十五年で四階建て三十二戸のマンションに住んでいます。このマンションはエレベーターはついていますが、玄関までに階段を五段ほど上らなくてはなりませんし、廊下や階段にも手すりがなく、高齢者や障害者の方には不自由なものになっています。理事会では階段をまずスロープに改装したいとの意見が出ています。どのように進めればよいですか。(東京都・Y生)


 新井 築年数のたった小規模マンションで、このような共用部のバリアフリー化(身体上のハンディキャップを持つ人に障害のない生活環境をつくり出す)に取り組むことは、大変よいことです。それは自分たちが住むところをよくしていこうという意識が育ち、建物を長持ちさせることにもつながります。
 理事会で組合員の意見の集約は。
 ――前に簡単なアンケートをとりました。

 新井 費用の問題もありますから、できることから手をつけることです。その課題を成功させるポイントは、第一に単に高齢者・障害者だけという狭い見方からではなく、みんなの問題であることを確認しながら進めることです。そして多くの居住者に積極的意見を出してもらい、計画に反映することです。
 第二は改修の対象範囲のことです。移動の自由を確保するという視点で「安心して住み続けられるマンション」を目標に施設全体を見直すのです。そうすればエレベーターの改修も課題になります。できれば専門家の協力を得たいですね。
 スロープは幅とともに長さも必要です。現在の階段や玄関周囲にスペースは。
 ――玄関横に三メートル程度の空きがあります。

 新井 車いすを考慮すれば最低でも十二分の一のこう配、つまり一メートルの段差は十二メートルの水平距離が必要になります。スロープは折り返すことも考えられます。また床には溝つきの滑りにくいものを使います。
 東京都では条例に基づき施設整備マニュアルを作り、公共施設のバリアフリー化を進めています。マニュアルにはスロープ等の構造が図解されています。

 ――この改修に自治体などからの補助は?
 新井 東京都では分譲マンションの共用部分の改修で管理組合が住宅金融公庫の融資を受けた場合は、その金額に対する一定の利子補給制度があります。また、数は少ないですが、自治体の中には改修工事費に対する助成制度もあります。


(2002年03月20日)



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