修繕工事の準備しているが工事管理は住民で可能か

回答者 マンション管理士 千代崎一夫さん(ハウジングケースワーカー・住まいとまちづくりコープ)


 

 建築後二十年のマンションですが、理事会では修繕工事をしていないので大きな工事を準備しています。すでに諮問委員会として修繕委員会をつくり、理事以外の人の力も集め、外部の専門家に依頼してサポートしてもらうという合意も大方の人ではできています。
 しかし、ある理事は修繕工事のコンサルタントの作業を「調査診断」と「改修設計」と「工事監理」の三つに分けて考え、最後の工事監理は自分たちでやろうといっています。そういうことは可能でしょうか。(東京都・F生)


 千代崎調査診断と改修設計はその後の作業がありますから、変更を含め取り返しがききます。工事監理は最後の工程ですので後がありません。調査診断と改修設計をする能力があれば工事監理も可能ですが、前の二つができなければ工事監理はできないと思います。工事監理がどうしてできると考えるのですか。

 ――調査報告書や改修設計の図面や仕様書は作れませんが、そういうものができていれば、その通りやればいいのだからと。

 千代崎「調査診断」は、調査した結果を検討し、評価したものを診断書としてまとめ、他の方にも分かるようにするものです。この診断は工事が必要かどうかを住民全体で合意する判断材料になります。
 「改修設計」は仕様書や図面を作るのが目的ではありません。診断を受けて、どの部位をどのように修繕・改良するのかの合意をする最初の段階です。
 この後、通常は「発注業務」として、見積もってもらう会社の公募、選択、現場説明、見積もりの分析、施工会社の選択・契約、詳細条件の詰め、説明文書のチェック、工事説明会までがあります。
 「工事監理」はこれ以降の作業ということになりますが、これも工事を進めていくうちに予定通り起こることと、予定外に起こることを打ち合わせしながら決めていくことがどうしても必要です。
 監理者だけで決められることもありますし、理事会や修繕委員会でないと決められないこともあります。
 こういう打ち合わせをして決定し、またその決定過程を記録しておくことを含めて非常に大切な作業です。
 住民でするということなら、発注業務の段階から監理する人をきちんと決めて取り組む必要があります。そして援助するようなコンサルタントもいますので探すことです。
 調査診断、改修設計、工事監理の三つの作業を説明しましたが、これらの作業を安易にしているコンサルタント事務所もあることから簡単にできると思ってしまうかもしれませんが、適正に行うのは大変な作業です。


(2001年04月18日)



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