■「マンション耐震強度偽装事件」

2005年12月8日(木)付「しんぶん赤旗」より抜粋

耐震偽装問題について

CS放送 志位委員長が語る



 日本共産党の志位和夫委員長は七日放送(六日収録)のCS番組・朝日ニュースター「各党はいま」に出演し、マンション等の耐震強度偽装問題について質問に答えました。主なやりとりの要旨を紹介します。聞き手は、朝日新聞の根本清樹編集委員。

耐震偽装問題

建て替えか、ローン解消かをえらべる法律に則して、居住者の権利をまもる対策を

 根本 耐震偽装問題で、政府が被害者支援策を決めましたが。

 志位 解体費、移転費、家賃などへの一定の補助は当然です。一番問題なのは、数千万円規模での住宅ローンを抱えたままという居住者の実態をどう解決するのか、その道すじがしめされていないことです。重いローンを払いつづけながらの生活再建はとてもメドがたちません。政府の対応は、この問題に踏み込んでいません。

 住宅の品質確保促進法(一九九九年成立)では、重大な欠陥があった場合、売り主の瑕疵(かし)担保責任が発生し、購入者に建て替えか、契約解除とローン解消を選ぶ権利が認められることになっています。

 政府の対策としては、この法律に則して、全面的な建て替えか、契約の解除・住宅ローン解消かを選べる支援の枠組みをつくることが必要です。それにかかる費用は、被害をあたえた当事者がまず最大限負担するのが当然ですが、くわえて関連金融機関、不動産業界の協力と負担という問題も出てきます。居住者の権利をしっかり守っていくための緊急の対策がもとめられます。

「個人補償はしない」という枠組みを大本から見直すべき

 根本 公的支援の枠組みをどう考えますか。

 志位 今回の場合は、あまりに規模が大きいために、当事者などの負担を求めても、実際の負担能力をこえてしまう事態になる。ここに一番の問題があります。その際、国がどういう責任を果たすかが問われてきます。ここで障害になってくるのは、住宅再建への公的支援、個人補償は行わないとする、これまでの政府の考え方の大枠です。

 「私有財産制の国では個人財産の形成になるような支援はやらない」という、この大枠があるために、阪神大震災、中越大震災のときも、政府は、住宅再建への個人補償をやっていません。自民党の中川秀直政調会長も、「阪神大震災や中越大震災のときも補償をしていないから、今回もできない」といっています。この大枠そのものを大本から見直すところに踏み込まないと、抜本的で、国民みんなが納得できる解決の方向にはすすまないと思います。

 根本 個人補償についての政府の考え方の見直しは難しいのでは。

 志位 それは政治判断です。わが党の国会での追及に、(個人補償は)憲法上禁止されていないと政府は答弁しました。やる気になれば、公的支援はできます。自然災害の被災者も含めて、生きていくのに必要不可欠な住宅の再建を公的に支援するスキーム(枠組み)をつくることがいよいよ急務となっています。

根本問題は「官から民」の名で建築確認を民間に移したことにある

 志位 この事件がおこった根本の問題をいいますと、一九九八年に建築基準法を改悪し、建築確認の検査を、「官から民へ」ということで、民間に移しました。ここに問題が起こる背景があったということは共通して指摘されています。

 民間の検査では、検査を頼んでくる方は「お客さん」ということになり、利潤第一主義に流され、どうしても検査が甘くなる構造が必ず生まれてきます。再発防止のためには、建築確認を民間まかせにしてきた流れを抜本的に見直す必要があります。

 とくに、国と自治体が建築確認にしっかり関与することです。ただ形式的な報告文書を受け取って「確認」するだけではなく、実質的な責任を負えるような体制にすることがどうしても必要です。体制の抜本的強化がもとめられています。

 根本 一連の規制緩和の流れの一つの帰結が今回の問題ですか。

 志位 そうですね。規制緩和万能、「官から民へ」万能論がどういう結果をもたらすかということが、一番悪い形であらわれたものです。

 米国ロサンゼルスでは、「インスペクター」とよばれる公的検査官制度があり、資格者が建築の現場に十五回以上もチェックに来るというやり方をとっています。アメリカと比べても、日本の検査体制は、公の責任を放棄したものです。ここを大本から直さなければなりません。

 根本 被害の拡大もどこまで広がるか分かりません。

 志位 一九九八年以降、規制緩和が進んだなかで起こっている問題ですから、同じような問題があちこちにあるのではないかとの不安があります。公共性をもった集合住宅については、国の責任で、自治体とも協力して、すべて検査することが必要です。



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