2006年5月15日(月)「しんぶん赤旗」
イラン核開発問題
直接対話の声相次ぐ 米に要求
イランの核開発問題への対応をめぐって、米政府に対し、イランとの多国間交渉への参加やイランとの直接対話を求める声が相次いでいます。米政府はこれを拒否しています。
ロイター通信によると、オルブライト元米国務長官は五月初め、「いまこそイランと直接対話するときだ」「(対話は)外交解決の意思を示すことになる」と語り、ドイツのユング国防相は「米とイランの直接的接触なしに外交的打開は難しい」と述べています。
さらに、エルバラダイ国際原子力機関(IAEA)事務局長や中国の王国連大使、米共和党の有力者リチャード・ルーガー上院外交委員会委員長らが両国の対話を求めています。
アナン国連事務総長は十日、米イラン直接交渉の可能性について米当局者と話しあったことを明らかにし、十二日には、欧州が検討中の包括案に基づく対イラン交渉への米国参加を求めました。
ロイター通信によると、同氏は四日、米国のテレビで、二〇〇五年夏に決裂した欧州連合(EU)三国・英仏独とイランとの交渉の印象をこう語りました。「先の交渉では、欧州と議論することはなんでも米国にチェックされなければならなかったから、イラン側にちゅうちょがあった」。イランは欧州の背後に米国がいる状況では「すべてを交渉の場に出さないだろう」と。
イランと米国は、一九七九年のイラン革命後、八〇年の米国大使館員人質事件を機に、外交関係を断絶しました。米政府高官は両国関係回復の主要な障害としてイランの“執念深いイスラエル敵視”を引き合いに出しています。米国はイスラエルと戦略的関係を結び、同国を対中東政策の支柱としています。
イランのアハマディネジャド大統領が八日にブッシュ米大統領に出した書簡は、イラン核問題とこうした米イラン関係の歴史的経緯のもとで、国際的に注目されました。
米政府はこれを事実上黙殺し、インドネシアを訪問したアハマディネジャド大統領は十三日、会見で、「イスラエル以外のすべての国と交渉する用意がある」としつつも、「軍事力の行使に訴えようとするなら、彼らとは対話しない」と述べ、制裁を視野に入れた米国の姿勢を批判しました。
イランでのIAEAの活動に詳しいウィーン駐在のある外交官は、イランは米軍に包囲されていると感じており、「対イランの圧力が改革派を含めてイランのすべての党派を団結させた」「米国が北朝鮮と対話ができるなら(イランと)できない論理はない」とロイター通信に語っています。
(小玉純一)
湾岸諸国 紛争危ぐ 話し合いで
イランの核開発問題をめぐってイランのアハマディネジャド大統領が、ブッシュ米大統領に両国間の問題解決を提案する書簡を送付しましたが、米国はこれをはねつけ、両者の距離が縮まる様子はありません。
こうしたなか、ペルシャ湾岸諸国のメディアは、イラク戦争のような紛争の再燃を危ぐし、話し合いによる問題解決の道を求めるよう主張しています。
バーレーン紙アハバル・アルハリージ九日付は論評で、「イランの“核兵器”を保有しようとする試み(イランは否定しているが)は、アルカイダなどの過激なグループがパキスタン軍にムシャラフ政権打倒を呼びかけていることを勇気づけているようにみえる。もしそれ(クーデター)が実現すれば、これらの過激グループが核兵器を保有することになる。このシナリオは西側諸国だけでなく、近隣のアラブ諸国、特に湾岸諸国を震え上がらせるだろうし、米国とイランの間で新たな戦争がおきれば、これらの国々は損害を被ることになる」とのべています。
アラブ首長国連邦紙ガルフ・ニューズ九日付は「イランの核問題の行き詰まりが継続すれば悲惨な結果になる。湾岸協力会議諸国は、平和的に交渉を通じて問題を解決することこそが、現実的解決をもたらす最良の方法だと呼びかけている」と湾岸諸国としての態度を表明。「イランは隣国であり、イランとのあらゆる分野での緊密な関係を歓迎する。しかし、イランの核問題については、われわれだけでなく、世界中が困惑している」との同国外相の発言を報じました。
サウジアラビア紙アルジャジーラ八日付は社説で、「イランに対する国連の制裁が武力行使をともなうものになれば、域内に新たな暴力の循環をもたらし、いつ終わるともわからない、計り知れないほどの規模で人や物資が失われる」とし、「もしイランに対する軍事的衝突が一週間続いた場合、いくつかの国で経済が崩壊し、石油価格は何倍にも高騰する」との複数の石油問題専門家の意見を紹介しました。
カタール紙アルワタン十一日付は「直接対話は国際的な困難を除去する最短の道」と題する論評で、イラン大統領の書簡を評価した上で、「米国は直接対話の道を開くことを考えていくべきであり、そうすることによって双方の誤解を取り除き、現在の危機を外交的に解決することができる」と米国にイランとの交渉に応じるよう訴えています。
(カイロ=松本眞志)

