
2006年4月9日(日)「しんぶん赤旗」
誤ったハンセン病政策の犠牲
胎児への子守歌 完成
歴史語り継ぐ力になれば
ハンセン病患者の子として生きることを許されなかった胎児への子守歌「いのちかえして」がこのほど完成しました。作曲したのは群馬県高崎市の会社員、斉藤悟さん(47)です。詩は谺(こだま)雄二さん(74)=国立ハンセン病療養所栗生楽泉園・ハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会会長=が書きました。第二回ハンセン病市民学会総会(五月十三―十四日、富山市)で初演します。
ハンセン病患者を“撲滅”するという国の誤った政策のもとで、堕胎された胎児は三千にのぼるといわれます。さらに百体以上のホルマリン漬けの胎児標本が現在も保管されていることが「ハンセン病問題に関する検証会議」の調査で明らかになりました。
国の強制隔離政策などを断罪した熊本判決(二〇〇一年五月)以後、「群馬ハンセン病裁判を支援し、ともに生きる会」などで活動してきた斉藤さんは「知れば知るほど驚きの連続でした。ハンセン病の悲惨な歴史を語り継いでいく力になれることを願っています」と言います。
谺さんは「市民学会の総会テーマの一つが胎児標本問題です。国は焼却処分する方針ですが、この問題でのきちんとした謝罪なくして闇に葬ることは許されません。取り返しのつかない人権侵害があったという事実を、歌を通して多くの人に知ってもらいたい」と話しています。
いのちかえして
〜ハンセン病患者の胎児と水子に捧ぐ〜
作詞・谺 雄二
作曲・斉藤 悟
母さんどこ?
父さん来て!
ボクはホルマリンに漬かって瓶の中
ワタシもホルマリンに漬かって瓶の中
ここは いつだって夜
重たい闇に心つぶされ
昨日も今日も
いやとっくに五十年のうえ経つのに
あの日から眠れない
たしかに挙げた産声は
濃盆の底にゴム手袋の手で
押し殺され 息とめられて
眠れない
いまも眠れない
(中略)
いい子だね いい子だよ
いまも眠れないでいる
この子らのいのちかえして
いい子だね いい子だよ
一度もこの手に 抱くことも叶わず
いい子だね いい子だよ
この子らがそっと眠りにつけるよう
いのちかえして
この子らのいのちかえして