2005年9月11日(日)「しんぶん赤旗」
9・11テロきょう4年
米同時多発テロから四年。英国では七月七日に自国内で同時テロに見舞われました。米国の最有力の同盟国として、同時テロ直後のアフガニスタン侵攻、イラク戦争と米国の軍事攻撃に参戦した英ブレア政権は、労働党支持者を含め厳しい批判を受け、二〇〇三年五月と〇四年六月の地方選挙で惨敗、今年五月の総選挙も大幅後退しました。
■英国/自国でもテロ受けブレア首相へ強まる批判/「世界をより危険にした」
主要国首脳会議に合わせた英同時テロでは英国のイラク戦争参戦がテロの主要な要因だと批判を浴びました。
九月二日、中東のテレビ局アルジャジーラは、七月七日のロンドン同時テロ犯とされるモハメド・シディク・カーンが英語で語るビデオを放映しました。
「お前たちの選んだ政府は世界中でわが同胞に残虐行為を続けている」と興奮した口調で語るカーンの姿に英社会はショックを受けました。「テロリズムの邪悪なイデオロギーが問題だ」とイラク戦争との関係を否定してきたブレア首相の責任を問う声が一段と強まりました。
カーンのビデオ放映の数日前には英外務省の覚書がメディアにリークされていました。このなかで外務省の幹部は、イラク参戦など英国の中東外交政策が過激なイスラム教徒団体がメンバーを増やす“カギとなる推進力をもっている”とのべ、テロと英外交との関連を指摘していました。
ブレア政権は七月の同時多発テロ以降、テロを扇動する外国人を国外追放にするなどテロ対策の強化を打ち出しました。しかし人権擁護団体などは虐待・拷問のある国には移送できないと決めている人権条約に違反すると批判を強めています。
英国の人権団体「リバティー」は、「拷問を行ってきた国に容疑者を送ることにならないのか」とただし、「テロ容疑者は世界中に送るのではなく裁きにかける方がよいのは明白だ」と政府の対策を批判しました。
さらに、七月二十二日にテロ容疑者と誤認されて射殺された事件では、ブラジル人青年が不審な行動や身なりをしていなかったことや警察のおそまつな捜査ぶりが明らかになり、ブレア政権のテロ捜査はテロとたたかう上で肝心な団結をないがしろにするものだとの批判が市民の間で上がっています。
〇三年三月のイラク戦争開始直前に史上最大の動員をした英反戦運動は二十四日に全国規模のデモを行う予定です。主催団体の戦争ストップ連合は「ブッシュとブレアのテロとのたたかいは、世界をより危険にした」と指摘。「テロがイスラム教徒の狂信に根ざすものとの見方を拒否する。イスラム教徒もイスラム教も問題ではない。テロはこの世界の現実に根を持っているのだ」と指摘し、イラクからの英軍の撤退を掲げ、デモへの参加を呼びかけています。
(ロンドン=西尾正哉)
■イラク/占領がテロの拠点に変えた/今も続く米軍の攻撃
「対テロ」の掛け声で強行されたイラク戦争。同国の現状はどうなっているでしょうか。
「旧フセイン時代がよかったとは言わないが、少なくとも治安に関しては何の問題もなかった。いまは一度外出したら、無事に帰宅できるかどうかさえわからない」
イラク取材を通して何度も聞いたこの声は、消えるどころかますます広がっています。
実際、戦争開始から約二年半が経過したイラクでは、現在も武装勢力の攻撃やテロのニュースを聞かない日はありません。八月末には、イスラム教シーア派の宗教行事参加者が「テロのうわさ」でパニックになり、千人近くが死亡する大惨事まで発生。それほどまでに、イラク人はテロの恐怖と隣り合わせの生活を強いられているのです。
イラクでは、テロ非難とともに、混乱の根本原因として、米軍をはじめとする占領軍の存在を指摘する声もかつてなく高まっています。
移行政府のマリキ運輸相は八月末の大惨事をうけ、「テロと占領はイラク国民の生活に日々、犠牲をもたらしている。テロや武装勢力の攻撃は占領の産物であり、占領はイラクを国際テロ組織の活動の拠点に変えてしまった」と厳しく非難しました。
イラク人の怒りの背景にあるのは、米軍が現在もイラク各地で攻撃を継続し、多数の住民を殺害し、テロを拡大しつづけていることです。昨年十一月には米軍が中部ファルージャを総攻撃し数千人の住民が犠牲になりました。同軍は現在、再び「テロリスト掃討」を口実に北部タルアファルへの総攻撃を準備しています。住民犠牲とともに、政治プロセスへの深刻な影響が懸念される事態となっています。
さらにイラクが、国際的に拡散するテロの「拠点」ともなってしまったことも重大です。国連のアナン事務総長は五日、次のように語りました。
「若いイスラム教徒は、自らの社会で、そして西欧で不当に扱われていると感じている。イラクの状況はそれを加速させている」「イラクはテロ活動の中心として主要な問題となってしまった」
(カイロ=小泉大介)
■止まらないイラク撤退の流れ/崩壊する有志連合/米国・与党内からも
イラク占領の長期化・泥沼化にともない、米国主導の有志連合のほころびが目立ち、参加国は減少する一方です。
これまで「多国籍軍」という名のもとの有志連合に三十八カ国が派兵しました。このうち、スペイン、オランダ、ハンガリーなど十四カ国が撤退を完了しました。このほか、撤退を開始している国がイタリア、ポーランドなど四カ国あります。有志連合にとどまっている国は二十カ国にすぎません。
その二十カ国のうちでも、カザフスタンでは、アルティンバエフ国防相が五月に「仕事を終えることを考える時期」と表明しました。さらに、今月六日には、米英両国に次ぐ三千二百人の部隊を派兵している韓国で、政府・与党が三分の一の撤退を検討していることが明らかになりました。
ブッシュ米政権が「イラク戦争の継続」を表明しているなかで、有志連合参加国で撤退の流れがとまらないのはなぜか―。
イラク占領の泥沼化や治安悪化により、「復興支援」という当初の派遣目的との食い違いが明白になってきたもと、派兵国で撤退を求める声が高まっていることがあります。
ポーランドの場合、一時、米英韓伊に続く二千六百人をイラクに派兵していました。それが、ことし二月に八百人の撤退を開始し、七月にも一部撤退しました。今年末あるいは〇六年初めには全面撤退の予定です。
同国の撤兵判断をシュマイジンスキ国防相は「ポーランドの財政状況とイラクの治安状況の評価にもとづく」としています。
韓国で撤退の検討がされていることを韓国メディアに明らかにした与党「開かれたウリ党」の金星坤・第二政策調整委員長は「派兵に対する韓国国民の感情と世論が悪化していることを考えれば、規模の縮小は避けられない」とのべ、縮小検討の背景に世論の存在をあげました。
韓国国会には、与野党三十一人の議員がすでに共同でイラク撤兵決議案を提出。三百五十以上の団体で作った「イラク派兵反対緊急国民運動」が政府に撤兵を要求していました。
イラクでの犠牲者数は膨大で、減少傾向の兆しはありません。民間人の死者は「イラク・ボディ・カウント」の集計によると二万八千人近くと見られています。有志連合の兵士のなかでも、九月五日までで米兵千八百九十五人、英兵九十五人、その他の国で百一人の合計二千九十一人が死亡しています。
こうしたなか、シンディ・シーハンさんのようにイラクで犠牲になった兵士の母の反戦運動も起こっています。
米国内の世論調査では「イラク戦争継続」を主張するブッシュ大統領の支持は低下する一方です。
八月二十六日に発表されたギャラップの世論調査では、ブッシュ大統領の支持率が40%となり、前月末調査の44%からさらに低下し、〇一年一月に同氏が大統領に就任して以来最低です。
議会・与党のなかからもベトナム従軍経験があるヘーゲル上院議員のように「米国は行き詰まりに陥っている。長く居座り続けるだけ多くの問題を抱えることになる」として、イラクからの撤退を求める声がでてきています。
同時テロ直後に90%を超えた高支持率を背景にして、「対テロ戦争」の名でアフガニスタン戦争、イラク侵略へと突き進んでいったブッシュ政権。いま、その足元が揺らいでいます。そうしたなか、いつまでも米国に追随して自衛隊派兵を続けようとしている日本政府の責任もまた問われています。
(西村央)
▼有志連合の崩壊状況
●撤退済み(14カ国)
ニカラグア、スペイン、ドミニカ共和国、ホンジュラス、フィリピン、タイ、ニュージーランド、トンガ、ハンガリー、ポルトガル、モルドバ、シンガポール、ノルウェー(*)、オランダ(*)
*ノルウェー、オランダは連絡将校のみ残留で本隊は撤退済み
●撤退を開始(4カ国)
ポーランド、ウクライナ、ブルガリア、イタリア
●駐留継続(20カ国)
アルバニア、アルメニア、オーストラリア、アゼルバイジャン、ボスニアヘルツェゴビナ、チェコ、デンマーク、エルサルバドル、エストニア、グルジア、日本、カザフスタン、韓国、ラトビア、リトアニア、マケドニア、モンゴル、ルーマニア、スロバキア、英国

