2005年6月18日(土)「しんぶん赤旗」

都議選で問われる「靖国史観」

戦争賛美 エール交換

自民・民主都議と石原知事


 靖国問題は東京都議選の大事な争点の一つです。日本の侵略戦争を“正しかった”という靖国神社と同じ歴史観を持つ石原知事や、“知事親衛隊”として「大東亜戦争」賛美の議会内展示や集会を開く自民・民主議員――。首都・東京の議会を「靖国史観」の発信地にしていいのかどうかが問われています。


 一九九九年九月二十二日の都議会。「靖国」をめぐるこんなやりとりがありました。

 自民・古賀俊昭都議(日野市) 「来年八月十五日、知事が靖国神社に向かって動いたとき、外国の干渉に屈して中断している首相の公式参拝に道を開くことになるのではないか」

 石原知事 「喜んで参ります。都知事として行くんですよ」

 石原知事は翌年から、終戦記念日(八月十五日)に五年連続して靖国神社へ参拝します。

 古賀都議はホームページに「都知事の靖国神社参拝の実現の先頭に立つ」と書き、実績として誇っています。

「同志」と呼ぶ

 「小泉首相と石原都知事の靖国神社公式参拝を支持する都民集会」なるものが都議会の会議室で開かれたのは二〇〇一年八月七日。小泉首相が靖国参拝を公言し、問題となっていた時期でした。

 呼びかけたのは古賀都議と田代博嗣都議(自民、世田谷区)、土屋敬之都議(民主、板橋区)。「日の丸・君が代」強制や都知事のテロ容認発言(外務省幹部宅に「爆弾仕掛けられて当たり前」)支持などで行動を共にし、都知事を「同志」と呼ぶ議員です。

 翌〇二年六月、三都議は「世界の歴史教科書を考える議員連盟」の名前で「歴史教科書を考える展示会」を議会内で開きました。展示では、韓国併合は「完全に合法」、従軍慰安婦の「『強制連行』の事実はいっさいない」など日本のアジア侵略を正当化する宣伝をおこないました。

 その翌年の〇三年八月に同議員連盟が議事堂で開いたのが「近代日本の戦争」展。ここでも靖国神社や旧軍部と同じ主張が宣伝されました。

 ▽「大東亜戦争と名付けた理由は…白人からアジアの植民地を解放することを目的としたから」

 ▽「日本の戦争は自衛のためであった」「日本のおかげでアジア諸国は全(すべ)て独立した」

 ▽「慰安婦」の存在と軍の関与を認め、おわびと反省を表明した一九九三年の河野官房長官談話は「国を貶(おとし)めた」

 侵略戦争を、アジア解放の正しい戦争だったと主張する靖国史観、ネオ・ナチ思想で貫かれています。

“親衛隊”重用

 これは石原知事の史観とうりふたつです。

 知事は二〇〇三年十月の講演で、韓国併合は「彼ら(朝鮮人)の総意」と発言。都議会でも「決して日本が武力で朝鮮を侵犯したのではないと考えている」とのべ、靖国神社についても「ほとんどの日本人にとって精神文化の一つの表象。外国人ががたがたいうことはない。内政干渉以上に失敬」などの発言を繰り返しています。

 知事と三都議の議会でのやりとりはまさに靖国派のエール交換です。

 重大なのは与党の自民、民主、公明、生活者ネットがこうした知事の言動をまったく批判しないばかりか、自民、民主は“知事親衛隊”の都議をそれぞれの会派内で重用しているという事実です。

 土屋氏は現職の都議会民主党総務会長。古賀氏は都議会自民党総務会長など役員を歴任。田代氏も同総務会長代行を務めていました。

 民主党本部は前回知事選で石原知事とは別の候補を支持しましたが、土屋都議は、民主党支持候補ではなく石原都知事を支持しました。このとき、土屋都議と同じく石原知事を支持した民主党都議は八人いました。その“石原派グループ”が現在の都議会民主党執行部です。幹事長、同代行、副幹事長もこの石原派グループから起用されています。

 他方、都議会自民党も石原知事賛美と靖国史観の言動が特徴です。

 ことし三月に野村有信政調会長(青梅市)は、「浜渦副知事も大東亜戦争は正しかったと思っているでしょう」などと発言。同党の小美濃安弘都議(武蔵野市)は昨年十二月、党を代表しての討論で「大東亜戦争とは、…やむを得ず自衛のため、連合軍と戦った戦時中の日本側の公式名称」と公言しました。小美濃都議は野村都議の「大東亜戦争」発言を批判した本紙報道を議会の場でわざわざ攻撃する始末です。

 「靖国神社に堂々と参拝を」と知事に求めた古賀議員の質問(〇二年六月)も自民党の代表質問でした。


侵略正当化を批判 共産党

 石原知事をはじめとする靖国史観派の言動を、都議会できぜんと批判し、侵略戦争に対する知事の認識をただし続けた唯一の政党が日本共産党です。

 〇一年九月の都議会代表質問で吉田信夫都議は、「靖国神社参拝は、知事が侵略戦争を肯定する立場だと公然と内外に表明することにほかならない」と参拝中止を強く求めました。この質問に知事は「あまりにばかばかしいんで頭にきた」「やめろとかいうことは、せんえつというんだ」などと激高しました。

 「韓国併合」暴言問題でも、吉田都議が質問趣意書で「歴史的事実をねじ曲げたもので、都民に誤った歴史観を植え付け、韓国・朝鮮の人々を侮辱しアジア友好に重大な障害をつくりだす」「発言を撤回し謝罪すべき」(〇四年二月)と厳しく指摘しました。都議団は靖国参拝中止、韓国併合正当化発言の撤回などを知事に申し入れ、今回の都議選でも争点のひとつとして訴えています。


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