
2005年3月24日(木)「しんぶん赤旗」
「新株」差し止め決定
ライブドアとフジの攻防
買収、防衛…入り乱れ
ニッポン放送争奪をめぐり、同放送によるフジテレビへの巨額の新株予約権発行について東京高裁は二十三日、差し止めを決めました。ライブドアの申請が東京地裁に続いて認められたもの。ライブドアは、同放送株の過半数を確保し経営権を握った上で、「本丸」のフジテレビに業務提携と買収攻勢の両にらみで臨む構えです。
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ニッポン放送のフジテレビへの新株予約権発行は、ライブドアによる同放送を通じたフジテレビへの影響力を排除しようとしたものでした。
ニッポン放送はフジテレビの株を22・5%持つ筆頭株主です。同放送を握れば、フジテレビへの影響力を行使できる関係です。
フジテレビは、株式の公開買い付け(TOB)で、同放送を子会社化しようとしていました。
そこへ、参入したのがライブドアです。二月八日同放送株の約30%を買い、すでに保有していた株とあわせて約35%を確保し筆頭株主に躍り出ました。ライブドアは過半数をめざして株の買い増しを進めました。
戦略に狂い
ライブドアへの対抗策としてニッポン放送、フジテレビ側が打ち出したのが「新株予約権の発行」です。新株予約権とは、あらかじめ決めた価格で株式を取得する権利のこと。ニッポン放送が大量の新株を発行することで、株式の総数を増やし、ライブドアの株式保有比率を一気に低める一方、フジテレビが同放送株を50%以上確保し、子会社化するのが狙いでした。
東京地裁につづいて東京高裁でも、新株予約権発行差し止めの仮処分が決定されたことで、二十四日に予定されていた発行はできなくなり、フジ側の戦略は狂いました。
新たな手法
ライブドアは、ニッポン放送株の過半数確保を急ぎ、六月の同放送の株主総会で役員を送り込み、経営権を握る考え。フジテレビに対して業務提携を呼びかける一方、場合によっては買収に乗り出す構えです。
買収資金調達の手法として取りざたされているのが、レバレッジド・バイアウト(LBO)という手法。買収先のフジテレビの資産を担保にして外資系金融機関などから三千億円の資金を調達する計画だといわれています。少ない資金をもとに多額の資金を調達できることから、レバレッジ(てこ)を効かすといういい方をします。
膨らむ費用
フジテレビも防衛策で対抗しようとしています。同テレビは二十二日、敵対的な買収者があらわれた場合、最大五百億円の新株を発行できる仕組みを導入したと発表しました。「新株発行登録」と呼ばれ、買収者が買い付けなければならない株数を急増させることによって、買収を難しくすることが狙いです。
たとえば、ライブドアの子会社化したニッポン放送がフジテレビ株を50%取得したとしても、新株が発行された段階で、保有比率は下がります。このため、買収費用はさらに膨らむことになります。
新株の大量発行で買収者の意欲をくじく仕組みをあらかじめ設けておく企業防衛策は「ポイズンピル(毒薬)」と呼ばれています。
高裁決定ポイント
東京高裁が二十三日出した決定のポイントは次の通り。
一、ニッポン放送の抗告を棄却し、新株予約権発行を差し止め
一、予約権発行は経営支配権の維持が目的で著しく不公正
一、敵対的買収者がグリーンメーラー(株の買い占め屋)であることなどを会社側が立証できれば、予約権発行は可能
一、ライブドアがマネーゲーム目的で敵対的買収を行っているとは認められない
一、買収で企業価値が損なわれるかどうかは、株式市場の評価などに委ねるべきで、司法判断に適しない
一、ライブドアの時間外取引によるニッポン放送株の大量取得は、証券取引法に違反しない