2005年2月25日(金)「しんぶん赤旗」

石播関連会社に労組結成

“雇用、生活守りたい”

経営の失敗を転嫁するな


 総合重機の大手、石川島播磨重工業の関連会社にたたかう労働組合の旗が翻りました。むちゃくちゃな経営がもたらした「赤字」を理由に、労働者に希望退職を募るという首切り攻撃に、「おれたちの雇用を守れ」と労働者がやむにやまれず立ち上がりました。

 (原田浩一朗)


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JMIU東京エンジニアリング支部の組合結成大会=20日、東京都内

 二十一日の朝、労働者たちが本社を訪れ、組合結成通知書と要求書を社長に手渡しました。

 労働組合を新しく結成したのは、東京・江東区内に本社がある東京エンジニアリング(略称・TEC)の十六人です。全日本金属情報機器労働組合(JMIU、全労連加盟)に結集しました。

 TECは、従業員数約百八十人。石川島播磨重工が株式の一割を持ち、歴代の社長は石播から送り込まれていて、石播の実質的な子会社です。

 石播のエネルギー部門の設計をするエンジニアリング部門と、橋や道路などの公共工事のコンサルタント部門からなり、全国五カ所の支社、十カ所の事務所を持っています。

希望退職の名で

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組合結成を知らせるビラを配る組合員=22日、東京・江東区内

 TECは、「赤字が増大し、会社の存続の危機に直面している」といって、エンジニアリング部門を丸ごと閉鎖し、そこで働く三十二人の労働者全員に希望退職に応じるよう提案してきました。もう一つのコンサルタント部門でも、二十人弱の退職を迫っています。

 「『希望退職』とは名ばかり。応じない者は業務命令で石播関連企業や取引先企業へ出向・転籍を迫り、事実上の指名解雇だ」「無謀な経営を追認した石播の責任も重大だ」。労働者に怒りと不安が広がりました。

 TECの「赤字」は、エンジニアリング部門が六、七年前から受注を始めた「EPC事業」でふくらみました。これは社長も認めています。

 「EPC事業」とは、生産設備の設計、調達、建設を一括して請け負うものです。

 「TECとしては、まったく未経験の分野でした。親会社の石播でさえ、十分な技術的知識をもっていないのです」と労働者は告発します。

 「大赤字」を社長も認める、ある石炭火力発電所の生産設備のEPCの場合、「同様の設備を他社が四億円で請け負った仕事を、二億五千万円で請け負ったもの」(技術労働者)で、「大赤字」は最初から明白でした。

 別の労働者は「ある時期の収支見通しでも、七つ受注したEPC事業のうち、黒字の見通しは一つだけ。EPC事業全体が、やればやるほど大赤字だった」といいます。

採算度外視して

 TECの労働者の親ぼく組織、「技友会」も、“EPC事業の赤字が会社の将来を危うくしかねない”と会社に問題を投げかけたほどでした。

 「当時は、『当社の技術力を生かす』といって事業を強行しておきながら、いまになって経営責任を棚に上げ、私たちに退職を迫るとは、無責任にもほどがある」「採算を度外視した無謀な受注をした会社こそ責任を負うべきです。慣れない仕事で苦労させられたわれわれに赤字の責任を転嫁するな」と労働者たち。

 話し合いを重ね、「雇用と生活、権利を守るためには、みんなが団結してたたかうしかない」と十六人の労働者が組合を結成しました。二十日夜の支部結成大会で、初代委員長に吉田眞盛さん(59)が選出されました。

 二十二日朝、本社前に「JMIU」の真新しい腕章を巻いた労働者が勢ぞろいしました。「私たちは労働組合を結成しました」と書いた組合ニュース第一号のビラを胸を張って配布しました。

 吉田さんはいいます。「TECや石播が自分たちの経営責任を労働者に押しつけるやり方は断じて許せません。長年、一生懸命に働いてきた総決算として、雇用と生活を守るために頑張りたい」


親会社の責任重大

 労働組合がTECと石播の労働者に対して訴えた「労働組合結成にあたってのアピール」は(1)今日の事態を招いた原因は、状況判断を誤り、赤字をふくらませ続けたTEC経営者と、それを追認してきた石播経営者にある(2)労働者には何の責任もない以上、労働者に退職・出向・転籍を迫るのは許せない。経営者は、みずからの責任の所在を明らかにし、労働者が安心して働ける真の再建計画をつくり、事業の継続と雇用を確保せよ―を求めています。



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