2005年2月23日(水)「しんぶん赤旗」

郵政公社

未払い残業代支払い

“是正の一歩”


 日本郵政公社で三十二億円の未払い残業代が二月十八日に支払われました。まん延していた違法なサービス残業(ただ働き)に、是正の第一歩となるメスが入りました。これまでの経過と今後の課題を探ります。(原田浩一朗)


130万円支給の例も

残る不満…申告は労働者まかせ

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越谷郵便局を調査する塩川議員(左から2人目)ら=2004年1月23日、埼玉県越谷市

 今回、未払い残業代が支払われたのは、全国の約四十万人いる郵政労働者のうち、五万七千人です。一人平均五万六千円ですが、労働者によっては、五十万円から百万円を超える残業代が支払われました。

 都内有数の忙しさといわれる渋谷郵便局の貯金課で働く佐藤裕子さん(51)は、二〇〇四年四月から十二月までの九カ月分のサービス残業代を手帳の記録にもとづいて請求。三十三万円余の未払い残業代が支払われました。「一月以降は、仕事が終わると上司が一分単位で残業時間を記録し、きちんと残業代が支払われるようになりました」と喜びます。

 都内のある郵便局の課長代理(35)は、〇四年四月から十二月までの総額百三十三万円の未払い残業代を取り戻しました。

 一方、「是正はごく一部。郵政公社はサービス残業を根絶するために真剣に努力してほしい」との声が現場の労働者から上がっています。

 一番大きな不満は、日本共産党の塩川鉄也議員が二十二日の衆院総務委員会で指摘したように、本来なら使用者である郵政公社の責任でサービス残業の実態を調べて是正すべきところを、労働者の責任で「修正申告」をするよう求めたこと、〇四年十月から十二月の三カ月間に期間を区切ったことです。

 東京都内のある特定局で働く五十四歳の女性職員は、郵政産業労働組合(郵産労、全労連加盟)がつくった「出退庁時間記録表」で出勤時間、退勤時間を記録していました。これにもとづいて昨年十月から十二月までの三カ月分のサービス残業代を申告。その結果、約十一時間分、三万二千円分の未払い残業代が支払われました。

 しかし、まわりの多くの労働者は「記録をつけていないから申請はできない」とあきらめてしまい、七人の職員のうち、申請したのは一人だけだったといいます。

 労働者によると、サービス残業是正にとりくんだ局がある一方、郵政公社の通達文書を握りつぶし、まったく内容を知らせなかった特定局もあったといいます。

公社責任で調査を

 郵産労の山崎清委員長の話 今回の是正は、サービス残業代を申請した一部の労働者のごく一部が支払われたにすぎません。公社は、各種の業務で使う端末の稼働時間とか、いろいろな記録をもっているんですから、公社の責任で残業時間を調べ、少なくとも二年間はさかのぼって是正すべきです。そして、タイムカードなどの客観的な労働時間管理ができるように整備して、必要な人員を増やすべきです。



日本共産党繰り返し追及

2003年4月1日日本郵政公社発足

6月26日小池晃参院議員が参院厚生労働委員会で質問
04年1月23日塩川鉄也衆院議員が埼玉県越谷郵便局を現地調査

2月24日塩川議員が衆院総務委員会で質問

11月16日塩川議員が衆院総務委員会で質問。生田正治郵政公社総裁は「(サービス残業は)経営の恥だ。かなり根気がいると思うが根絶していきたい」と答弁。

11月25日塩川議員が衆院総務委員会で質問。越谷郵便局の超過勤務命令簿が白紙になっている事実を示し、生田郵政公社総裁に調査と是正を要求。

12月10日東京・日本橋郵便局の課長代理が、未払い残業代の支払いを求めて東京地裁に提訴。中央労基署にも労基法違反として申告。

12月13日郵政公社が「勤務時間管理に関する実態調査について」を通達。このなかで、11月16日の塩川議員の質問に対する生田総裁の答弁も引用し、同年10月から12月までの3カ月間のサービス残業を調査し、2月18日に支給すると明示。
05年2月18日全国約5万7千人の職員に約32億円の未払い残業代が支払われる。



サービス残業代は過去2年分請求可

 労働基準法第一一五条は、「この法律の規定による賃金、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によって消滅する」と規定しています。サービス残業代は二年間は請求できるということです。

厚労省4・6通達

 厚生労働省がサービス残業を根絶するために〇一年四月六日にだした通達(4・6通達)では、「使用者は労働時間を適切に管理する責務を有している」ことを改めて確認し、そのための措置をとるよう求めています。




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