2005年2月22日(火)「しんぶん赤旗」

世界の中の逆流

日米同盟の安保体制像

崩壊歩む米主導「戦争連合」


 「世界の中の日米同盟」―安保・外交問題での十九日の日米トップの協議の場である日米安保協議委員会が確認した今後の日米安保体制像です。「世界の中の」といえばもっともらしいのですが、その実態は「世界」の大きな流れに背く、逆流の同盟像です。三浦一夫記者

 世界では今、戦後形成された米国主導の軍事同盟体制網が漂流状態に入りつつあります。イラク侵略戦争で米国は既存の軍事同盟関係を動かそうとしましたが、その思惑どおりに世界は動いていません。

NATO動かず

 戦後世界最大の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)がその一つです。フランスやドイツなど欧州の主要同盟国がイラク戦争に反対し、トルコも基地提供を拒否しました。結局、NATOそのものを米国の戦争のために動かすことはできませんでした。

 「NATOはもはや戦略協議の場ではない」。NATO加盟国の代表が集まって協議する最近のミュンヘンでの安保政策会議でのシュレーダー独首相の発言(本紙二十一日付既報)は、NATOそのものを再検討しようという流れの予兆として欧州を揺るがしています。

 アジアでも、軍事同盟関係を理由に米国に自動的に軍事協力する動きは見直されつつあります。米国と軍事同盟関係にあるフィリピンは、人質事件への対応の中で、ブッシュ政権の圧力をしりぞけて、イラクからの撤兵を断行しました。

 オーストラリアは米国のイラク戦争に積極的に協力していますが、同国と米国、ニュージーランドの三国の軍事同盟はいま、活動休止状態です。

 そんな状況下でブッシュ政権が考えだしたのが、戦争に賛成する国だけでの「有志」の「戦争連合」でした。ブッシュ大統領は、当初その「有志連合」は四十九カ国に達すると豪語しましたが、その「連合」もいま崩壊の道を歩みつつあります。

 日米安保協議の翌日におこなわれたポルトガルの総選挙の結果は、その崩壊の進行を物語る新たな出来事の一つでした。

「平和」への妨害

 世界の流れは、ブッシュ政権の単独行動主義や従来の軍事同盟中心の対応ではなく、国連を中心にした多国間の国際協調へと向かいつつあります。そのような流れのなかで、ひたすら米国との軍事同盟の機能強化を掲げるのは、米国と深い歴史的関係をもつ英国や、オーストラリアを除けば、おそらく日本だけではないでしょうか。

 今回の合意では、世界的規模と「共通の戦略目標」での米軍と自衛隊の協力の具体的な強化が語られました。町村外相が言う在日米軍再編の三段階とは、米軍と自衛隊の協力強化の過程にほかなりません。

 重大なのは、そうした日米軍事一体化が、米軍の世界戦略との一体化として地球規模で追求されていることです。そして、特にアジア太平洋地域について「不透明や不確実性を生み出している」とされ、「日米両国に影響を与える事態」での「緊密な協力」、安保面での共同対処が新たにうたわれたことです。

 アジアではいま、東南アジア諸国連合(ASEAN)から東アジアへと戦争のない平和なアジアづくりが「共通の戦略的目標」として追求されています。「世界のなかの日米同盟」はその流れにたんに逆行するだけでなく妨害するものです。

 いま、日本国内で進められている憲法改悪、九条廃棄の動きや、これと連動した二大政党制づくりの宣伝が、こうした日米軍事同盟強化の裏の仕組みづくりとつながっていることをみないわけにいきません。

 日米安保体制を根本から見直し、日本の政治の反動化を阻止することは、日本の未来のためだけでなく、アジアと世界の平和のために重要であることを今回のワシントンでの日米両政府間の合意が浮き彫りにしています。



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