2005年2月21日(月)「しんぶん赤旗」

津波から 住民どう守る

自治体の対策に見る


 スマトラ島沖地震によるインド洋大津波(昨年十二月二十六日)は改めて津波の怖さを痛感させました。地震多発国・日本は過去、数多くの津波に襲われました。この教訓をもとに、各地で津波対策がすすめられています。岩手県田老町と静岡県焼津市の、住民を守る施策、活動を紹介します。


早い避難 若い人の参加で

自治会の訓練で町の“弱点”知る

静岡・焼津市

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 駿河湾から御前崎沖を震源域とするマグニチュード8クラスの東海地震が切迫している静岡県。

 地震発生後、五分以内に津波の第一波が到達するとされている焼津市(注)では、東海地震説の発表を機に、いち早く自主防災組織を全市的にたちあげました(一九七九年)が、近年、「防災意識の風化」が指摘されています。

 インド洋大津波をテレビで見た第一自治会の斉藤?吉会長(80)は、「防潮堤が津波に耐えられるかと言われると不安は残る。スマトラや中越地震を見て住民の防災意識が少しは高まったんじゃないか」と話します。

 焼津市は、駿河湾に面した十一キロメートルの海岸線をもち、沿岸部の津波危険地域が密集市街地で、約二万三千人(六千九百四十世帯)が住んでいます。市消防防災局の望月康男消防司令長は、津波対策について「津波は『海水の壁』となって押し寄せ、数十センチでも足をすくわれます。津波警報が出た場合、市民にいかに早く知らせ、避難させるかです」と言います。

 焼津港、小川港の開口部を除く海岸線は、県が高さ六メートルの防潮堤を整備し、市は災害情報の伝達手段としての同報無線設置(百十三カ所)や、三階以上の建物について所有者の承諾を得て「津波避難ビル」に指定し確保してきました。

 市内二十三自治会のうち六自治会が、各地域の消火栓、防火水槽、医療機関などの位置を地図で確認し、避難路を考える「dig」(ゲーム型図上訓練)を実施。地震で落ちそうな橋や、立て込んでいる住家が倒壊した場合、通行できなくなりそうな道などを確認しました。

 記者が、望月消防司令長や自主防関係者に「津波、地震対策の課題は?」と問うと、焼津、小川両港からの津波の浸水を防ぐ漁港水門の設置とともに「防災訓練をはじめ、いざという時、若い人がどれだけ救助活動に参加してくれるかです」との声が返ってきました。

 静岡県・森大介記者


 (注)県の第三次地震被害想定結果(二〇〇一年発表)では、東海地震の際、焼津市に押し寄せる津波の高さは二―三・九メートル。被害は、「予知なし」の場合、死者十三人、重傷者十人、中等傷者二十五人、建物は中破一千五十棟、床上軽微(一部損壊)一千三百四棟、床下浸水一千四百八十四棟にのぼるとされています。


大被害から教訓、2433メートルの防潮堤

見通しよい避難路坂に手すりつき

岩手・田老町

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 岩手県田老(たろう)町は幾多の津波に襲われています。二つの三陸大津波では大被害をうけました。一八九六年(明治二十九年)六月十五日が死者行方不明千八百五十九人、一九三三年(昭和八年)三月三日は死者行方不明九百十一人。

 この大津波を教訓に津波対策がすすめられてきました。

 三四年、防潮堤造りに着手。戦争で工事が中断したため、完成は五七年。その後、拡張し七八年に総延長二千四百三十三メートル、海抜十メートルの防潮堤ができあがりました。海抜十メートルは昭和三陸大津波の波高です。

 高台の避難所へ向かう避難路は見とおしをよくするため交差点の隅を大きく切ったり、まっすぐ見えるようにしています。防潮林、防災行政無線、津波予測システムなど整備。自主防災組織づくりもすすめています。

 課題もあります。津波警報発令で防潮堤の水門が閉じるため海側の車などが内側には入れなくなります。車などが避難できる対策が必要だと思います。避難所に風雨をしのげる場所づくりや、観測体制強化のために海底地震計の設置も住民の強い要望です。津波の恐ろしさを風化させないため宮古市、新里村との合併に伴う「新市計画」にある津波伝承館も実現してほしいものです。

 日本共産党・崎尾誠田老町議


「防災地図」整備は12%

日本の海岸堤防は大丈夫?

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高橋衆院議員

 日本の津波警報システムは外国に比べてすすんでいるといわれています。海岸の堤防など対策はどうなのでしょうか。

 国土交通省の昨年五月のまとめによると、「東海、東南海・南海地震等が起きた際、海岸に到達するおそれが多い想定津波」の高さに対する海岸堤防・護岸は低いが18%、調査未実施30%。耐震化の必要な海岸堤防は7%、調査未実施60%。水門など堤防に設けられた開口部六千五百七十一カ所中、「想定津波」到達までに閉鎖完了は27%の千七百七十七カ所です。

 昨年十一月までのまとめによると、海岸線を有する市町村で浸水予測区域や避難所などを地図に記した「津波ハザードマップ」の整備は12%の百二十四市町村でした。

 日本共産党の国会議員団災害対策部会長の高橋千鶴子衆院議員は、「国、地方自治体は住民の声、専門家の意見をよく聞いて、それぞれの役割を果たし、堤防整備、避難所確立、観測体制、研究・技術開発など総合的に防災対策をすすめる必要があると思います」と話し、そのために力を注いでいくとのべています。



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