2005年2月18日(金)「しんぶん赤旗」

「大増税路線」を中止し、暮らしをまもり、国民経済をたてなおす予算に

2005年度予算案の抜本的組み替えを要求する

2005年2月17日  日本共産党国会議員団

(要旨)


 日本共産党国会議員団が十七日発表した二〇〇五年度政府予算案に対する抜本的組み替え要求(要旨)は次のとおりです。


 小泉内閣はいよいよ「大増税路線」に踏み出そうとしている。〇五年度と〇六年度の二年間で定率減税を縮小・廃止して三・三兆円の増税を押しつけ、さらに〇七年度には消費税増税を実施に移すというシナリオにもとづいて、二〇〇五年度予算案には定率減税の半減が盛り込まれている。さらに負担増は、年金課税強化、社会保険料の値上げなど、国民生活の隅々まで及んでおり、これらの合計は七兆円にのぼる。

 一九九七年の「九兆円負担増」は家計の所得が伸びているなかでおこなわれたが、それでも大不況の引き金となった。その結果、税収が大幅に落ち込み、かえって財政悪化を招いた。今回は、庶民の所得が減りつづけているときに強行される、まったく無謀な大増税であり、国民の暮らしや経済と景気にたいする破壊的影響は計り知れず、いっそうの財政悪化という悪循環をまねく道である。

 〇五年度予算に求められていることは、「大増税路線」を中止し、年金、介護など必要な社会保障の拡充、災害対策の強化、雇用、中小企業、農業の危機打開などのために予算を重点的に配分し、暮らしと日本経済をまもることである。イラクから自衛隊を直ちに撤退させ、自衛隊の海外派兵体制づくりを中止して、軍事費を大幅に削減することも差し迫った課題になっている。

一、「大増税路線」を中止し、むだな公共事業、軍事費、大企業・金持ち減税にメスを入れて暮らし・国民経済のための財源を確保する

 〈「大増税路線」は暮らしにも、経済・景気にも大打撃〉

 小泉内閣の「大増税路線」は、暮らしも、経済にも大打撃をあたえる。(1)定率減税を一気に廃止するとしても、二年かけて廃止するとしても、三・三兆円の庶民増税に踏み出すことに変わりはない。(2)雇用者報酬は毎年数兆円の規模で減り続けている。平均的なサラリーマン世帯の実収入は、九七年から〇四年の間に七十八万円減っている。このときに強行される増税は、「過酷な負担」以外の何ものでもない。(3)定率減税の半減による増税額は一・六四兆円だが、定率減税の全廃や社会保険料の引き上げ等を含めた〇五―〇六年度の負担増は、合計で七兆円にもなる。(4)負担増が「雪だるま」式にふくらむ。たとえば高齢者の住民税非課税限度額が廃止されれば、少なくとも百万人の高齢者が、住民税が非課税から課税になる。しかも、非課税から課税に変わることによって、国民健康保険料や介護保険料も連動して値上げになる。

 〈むだな公共事業、軍事費、大企業・金持ち減税の「聖域化」をやめ、社会保障、災害、雇用、中小企業対策の強化など必要な財源を確保する〉

グラフ:もうけは6兆円増、税金は1兆円増

大企業の「景気回復」で、大企業(金融・保険を除く)の経常利益は1997年度から2003年度に6兆円増えているのに、法人税・法人住民税は1兆円足らず増えただけ。減税の見直しは可能です。

 政府は、国民にこれほどの負担増を押しつけておきながら、無駄な大型公共事業を復活・継続している。総額一兆円規模の関西国際空港二期事業では、〇五年度から新たに滑走路などの建設を開始しようとしている。採算の見込みがたたないために道路公団が建設できない高速道路を、道路特定財源をつぎ込んで建設する「直轄高速道路」に、〇五年度だけで二千億円もつぎ込もうとしている。これらの、むだな公共事業に大胆なメスを入れる。

 自衛隊のイラクからの撤退、危険な海外派兵体制づくりの中止などで軍事費を大幅に削減する。

 国民の血税を政党が分け取りする政党助成金は廃止する。

 政府は、庶民に大負担増を押しつけながら、大企業や高額所得者にたいする大幅な減税には指一本ふれようとしていない。もともと、大企業・高額所得者向け減税は、「担税力」に応じた負担という税の公平に逆行するものだったが、少なくとも大企業の「景気回復」が明らかになった以上、法人税率を下げたまま、というわけにはいかない。大企業向け減税と高額所得者向け減税の見直しをおこなうべきである。(グラフ参照

二、海外派兵体制づくりを中止し、イラク撤退で、軍事費の大幅削減を

 〇五年度予算案は、海外派兵を初めて自衛隊の「本来任務」と位置づけた新防衛大綱、新中期防衛力整備計画のもとで、それを最初に具体化するものとなっている。アメリカの無法な先制攻撃に加担する国づくりをやめさせるためにも、関連する軍事費は計上せず、軍事費を大幅に削減するよう求める。政府はまた、アメリカの核戦略の一翼をになうミサイル防衛システムの開発、導入を広範囲におこなおうとしている。これは、アメリカと共同で参戦することを意味しており、あらゆる研究、開発、導入をとりやめるべきである。

 新たな装備はもとより、戦車、火砲などについても徹底した削減をおこなう。在日米軍「思いやり」予算は全廃する。

 自衛隊のイラク派遣費用は百四十六億円が計上されており、開始以来の総額で六百四十八億円になった。イラクでは、一時期三十七カ国となっていた軍隊派遣国が、イラク情勢の悪化のもとで、二十カ国になろうとしている。選挙をへて新しい政府、新しい憲法をつくるプロセスのなかで、米軍・多国籍軍の撤退をもとめる声はさらに広がりつつある。自衛隊はただちに撤退し、イラクの人びとが真に自分たちの手で国づくりをできるよう、国連中心の支援への枠組みの転換が必要である。

三、年金「改革」をやり直し、医療、介護、障害者福祉などを拡充する

 〈基礎年金国庫負担をただちに二分の一に引き上げ、年金「改革」をやり直す〉

 年金大改悪は実施を中止する。道路特定財源の一般財源化など歳出の浪費をなくす改革によって二・七兆円の財源を確保し、国庫負担を二分の一へただちに引き上げる。年金保険料の引き上げは凍結する。論議をやりなおし、全額国庫負担による最低保障年金制度の実現をめざす。

 〈介護保険の負担増を中止し、減免制度実現、サービス基盤拡充などをすすめる〉

 特別養護老人ホームなどの入居者の居住費、食費を保険の適用対象外として利用者負担にする改悪は中止する。国庫負担をただちに5%引き上げて30%とし、低所得者を対象にした、国としての保険料・利用料の減免制度の創設など、必要な改善をはかる。

 〈医療保険制度の窓口負担の軽減などの改善〉

 サラリーマンの医療費の窓口負担を二割に引き下げる。国民健康保険の国庫負担を増額し、低所得者を中心に窓口負担と保険料負担の軽減をはかる。

 〈障害者福祉、生活保護など社会保障の改悪中止・拡充〉

 障害者福祉に一割の利用者負担を導入する負担増は、障害者の命綱を奪うものであり中止する。生活保護の老齢加算、母子加算は、基本給付の低さを補う措置であり、削減は許されない。

四、生活再建への支援を抜本的に強化し、災害への備えを厚くする

 被災者を対象にした「災害援護資金」の強制的回収、災害公営住宅からの追い出しなどをやめ、生活と地域経済の再建への支援を継続、強化する。野党三党が共同で提出した被災者生活再建支援法の改正案の一日も早い成立をはかり、当面、住宅本体の建築や補修を支援の対象に加える。

 重要施設の耐震化、住宅の耐震診断と補強、河川堤防の改修、消防力の強化などの対策を抜本的に強化する。防災のために不可欠な観測体制の強化や研究・技術開発を進める。

五、実効ある雇用対策をすすめ、中小企業支援を強化する

 正規雇用を拡大するとともに、正社員とパート、派遣などで働く労働者との不当な差別や格差をなくす。長時間労働、サービス残業をなくし、新たな雇用を拡大する。労働時間短縮推進法の改悪(未達成の年間総労働千八百時間への短縮計画の放棄)、過労死防止基準の大幅緩和など、長時間労働と不安定雇用の拡大をさらに推進するやり方には断固反対する。若者雇用対策予算を大幅に増額するとともに、職業訓練中の生活保障、新規雇用の拡大などを抜本的に強化する。

 中小企業予算を大幅に増額する。小泉・竹中流の乱暴な不良債権処理策をやめ、中小企業と地域経済への円滑な資金供給をはかる金融政策に転換する。「まちづくり三法」を改正し、地域の商店街・中小商店の値打ちが生きる「まちづくりルール」を自治体と住民の自主的な判断でできるようにする。

六、食料・農業、環境、教育・子育てなどの予算を拡充する

 食料・農業 農家経営に打撃を与える米「改革」を中止し、ただちに米価の下支えと暴落に対する補償を実施する。BSE(牛海綿状脳症)から国民の安全を守るため、全頭検査を維持する。

 公害・環境 水俣病患者の救済に直ちにとりくむ。廃棄物の不法投棄を除去するために、排出者の処理費負担を求めるとともに、政府も基金の積み増しをおこなって除去を急ぐ。自然エネルギーの研究・開発や普及のための予算を大幅に拡充する。

 教育 少人数学級を推進する。LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、高機能自閉症などの子どもへの支援教育をすすめる。国立大学学費値上げはキッパリと中止する。老朽化が著しい国立大学の改修のための予算を増額する。児童虐待防止のための予算を倍加し、児童福祉司の倍加、子どもの「一時保護所」の整備などをおこなう。

 少子化対策 子育てや家庭と両立できる人間らしい働き方にする、子育てへの重い負担を軽減する子育て支援策を強化するという、二つの方向でのとりくみを強める。少子化対策の予算を一兆円規模に拡大し、第一子、第二子の児童手当を月額五千円から一万円に引き上げる。

 文化・スポーツ ヨーロッパに比べ低い文化予算を増額する。耐久年限をすぎたスポーツ施設の全国調査を実施し、その補修・改築等への助成費の増額をはかる。

 地方財源の拡充 住民サービスの低下をもたらさないよう、地方交付税の拡充をはかる。



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