2005年2月18日(金)「しんぶん赤旗」

新嘉手納爆音訴訟 飛行差し止め棄却

那覇地裁

国に28億円賠償命令

原告団長 「冷たい判決だ」


 米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)の騒音被害に苦しむ周辺六市町村の住民五千五百四十一人が、日米両政府に対し早朝・夜間の飛行差し止めと損害賠償などを求めた「新嘉手納爆音訴訟」の判決が十七日、那覇地裁沖縄支部でありました。


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静かな夜を取り戻すまでたたかう決意を固め、がんばろう三唱する原告団・弁護団ら=17日、沖縄市

 飯田恭示裁判長は、うるささ指数(W値)八五以上の区域に住む住民三千八百八十一人には「激しい騒音で精神的被害を受けている」として、総額約二十八億円を支払うよう国に命じましたが、飛行差し止め請求は棄却、将来分の賠償請求も却下しました。原告側は控訴する方針です。

 原告側は最大の焦点として、沖縄県の健康影響調査で騒音性難聴と診断された原告四人の個別立証を試みましたが、判決は騒音と健康被害との因果関係を認めませんでした。

 飛行差し止め請求については「国の支配の及ばない第三者の行為の差し止めを請求するもの」と従来の判例を踏襲。一方、国が主張した「危険への接近」については「航空機騒音の影響を受けずに生活できる地域がもともと限られている」として採用しませんでした。

 また、原告代表二十一人が米国政府に求めていた飛行差し止めについては、一度も審理を開かないまま却下しました。

 旧嘉手納や小松(三、四次)、新横田の各爆音訴訟では、W値七五以上で賠償を認める判決がでていますが、今回は賠償容認区域を後退させました。賠償額としては、約二十七億四千六百万円の支払いを命じた第三次厚木基地騒音訴訟の横浜地裁判決を上回り、過去最高となりました。

 仲村清勇原告団長は、「基地ありきの判断で絶対に許せない。非常に冷たい判決だ」と話しました。


「騒音、基地ある限り」

 「せめて静かな夜を返してほしい」―。住民五千五百四十一人が米軍機の爆音被害からの救済を求めた「新嘉手納爆音訴訟」。那覇地裁で判決があった十七日、原告らは「住民の痛みを全く理解していない」と悔しさをにじませました。

 全国の米軍専用施設の75%が集中する沖縄。判決でも「騒音の及ばない地域に住居を定めることが容易であるとは認め難い」と指摘せざるを得ない現実があります。法廷に入りきれなかった原告らの待つ裁判所の外でも、空を覆う雨雲から戦後六十年にわたって続く米軍機のごう音がとどろきました。

 爆音被害がもっとも激しい地域の一つ、嘉手納町屋良に住む原告の喜瀬守益さん(71)は「これからずっとこの地域に住んでいく孫たちの健康被害を少なくするために、せめて夜間の飛行差し止めだけは認めてほしかった。こんな騒音が基地ある限り続くのか」と言葉を詰まらせました。

 原告側弁護団の池宮城紀夫団長(65)は「全国の騒音訴訟で最悪の判決だ」と厳しく批判。「裁判所は健康被害を認めれば、差し止めをしないといけない。そうすれば安保条約が問題になる。そういう政治的判断をした結果だ。裁判官はどこに良心を売り渡してしまったのか」といっそう声を荒らげました。



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