2005年2月17日(木)「しんぶん赤旗」

6%削減どう進める

京都議定書発効 議長国・日本

産業部門の政策不在に批判


 先進国の温暖化ガス排出削減を義務付けた京都議定書が十六日、法的拘束力ある条約として発効しました。日本も実効ある国内対策を迫られることになりました。しかし、政府がすすめようとしている対策では、削減目標が達成困難という事態に――。日本は「京都の誓い」をどう守っていくのか。 宇野龍彦記者


 独立行政法人国立環境研究所は、今世紀末までに真夏日の日数が最大年間百二十日(現在は五十日程度)にも達すると試算。

 温暖化で梅雨前線が停滞しやすくなり、年間降水量が最大19%増えるとも警告し、浸水被害の多発などが懸念されています。

排出増えつづけ

 日本に義務付けられた排出削減量は、二〇一二年までに一九九〇年の排出量の6%減。産業部門などでの削減対策の遅れから、二酸化炭素排出量は九〇年から増えつづけ、〇三年度には8%増にも。このため、目標達成には14%減が必要になりました。

 市民環境団体・気候ネットワークの浅岡美恵代表は、「企業・公共系の排出は全体の80%、このうち半分を約百の企業からの排出が占める。しかし、企業の自主的とりくみにゆだねられて、国として政策がない」と、批判します。

省エネへ転換を

 地球環境と大気汚染を考える全国市民会議の早川光俊専務理事は、「二酸化炭素排出量を削減する方策は、一つは省エネで無駄遣いをあらためる(エネルギー効率を引きあげる)。二つ目は化石燃料依存から、自然エネルギー利用へとエネルギー政策を転換すること」と言います。

 しかし、政府の目標達成のシナリオは、この二つの対策がきわめて不十分です。

 〇二年にまとめた政府の温暖化対策推進大綱では、産業・運輸・民生(エネルギー起源)の二酸化炭素削減分は0%。八割の産業部門、火力発電所など大口排出源への対策が抜け落ち、原子力発電などの技術開発でせいぜい2%減が見込まれています。

 目標の6%のうち約六割の3・9%分が森林整備分として机上で算出されたもの。しかし、林野庁はこのままでは2・6%分しか達成できないと試算します。

 米国の主張で議定書に盛り込まれた先進国間の温暖化ガス排出量取引などの制度(京都メカニズム)では、1・6%分の削減を見込んでいます。しかし、「現段階で政府が確保できる見通しはゼロ」(環境省)。森林整備や京都メカニズムの二つとも、数字あわせのための、目標達成の「抜け道」と環境NGOなどから批判されていました。それすらも困難というのが実情です。

 京都議定書は、国際法としての拘束力があり、削減目標を達成できなかった場合、ペナルティーが科せられます。次の排出削減目標が一・三倍増になります。

 早川専務理事は、議長国の日本が国内目標を達成できないというのは「国際交渉への悪影響にもなる。残された時間は多くない。削減対策は待ったなしの課題だ」と訴えます。


 地球温暖化 地球は太陽光のエネルギーを受けて温められています。一方で、温められた熱エネルギーを宇宙空間に放出しています。双方の反復運動がバランスよく行われることで、住みやすい平均した温度を保っています。しかし、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの濃度が上がると、温められた熱を宇宙空間に放出する運動が妨げられ、地球が温室バリアーで包まれた状態になり、地表の温度が必要以上に上がってしまいます。



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