2005年2月15日(火)「しんぶん赤旗」 そもそも けいざい ワールド税制「改正」で家賃が上がる公団住宅に住むわが家の朝。「これって大変じゃない」と妻が郵便受けから持ってきた東京多摩公団住宅自治会協議会発行のニュースには、国の税制「改正」で高齢者世帯の家賃が上がるとの文字が……。どうして公団住宅や公営住宅に暮らす高齢者の家賃が上がるのか、見てみました。 山田英明記者 公団の高齢者を直撃表(公営住宅の家賃制度・公団住宅の高齢者向け優良賃貸住宅の家賃)早速、東京多摩公団住宅自治会協議会の興梠(こおろぎ)信子事務局長を訪ねました。「家賃が上がるんですか?」 「そうなんです。実際の収入は増えないのに、高齢者の中には、月一万円も家賃が上がる可能性の人が出てきます」「公団住宅だけではなく、公営住宅に居住する方も大変です」と興梠さん。国の税制「改正」の影響といいます。 なぜ、税制「改正」が家賃値上げに直結するのか―。国土交通省に問い合わせました。「所得税法改正によって老年者控除が廃止され、それに伴って公営住宅法施行令などが改正されたからです」と住宅局の井浦義典住宅資金管理官付補佐。地方公共団体が国の補助を得て管理・賃貸する公営住宅の家賃は入居者の収入などによって決められます。これまで収入額から差し引かれていた五十万円の老年者控除がなくなることで、基準となる「収入」が増えることになります。これが公営住宅の家賃引き上げにつながります。 都市再生機構が管理し、分譲・賃貸する公団住宅も、老年者控除廃止の影響を受けます。同住宅経営部の守安雅志ストック活用計画課長は「(公団の)高齢者向け優良賃貸住宅に入居している一部の方の家賃に影響が出ます」と説明します。 一定以下の所得の高齢者(六十歳以上)の家賃を軽減している高齢者向け優良賃貸住宅の入居者負担額は、公営住宅法施行令などに準じて決められているためです。 同経営部の紀伊一秀経営課長は、家賃改定や建て替え事業に伴う家賃減額の特別措置についても「ごく一部の方で受けられなくなる人も出てきます」と話しました。 大都市は3%の世帯
老年者控除の廃止に伴って家賃値上げの影響をうける世帯は――。国交省の井浦さんは「大都市圏では、公営住宅に入居している世帯の約3%となります」と答えます。都市再生機構の守安さんは「あくまでも〇四年度の状況をもとにした試算ですが」と断った上で、「高齢者優良賃貸住宅の場合で、約一万一千戸中の10%程度と見ています」と答えました。 全国公営住宅協議会の天野信二事務局長は「収入の少ない高齢者にとって深刻ですよ。自治体の家賃減免措置にも影響が出るはずです」と話します。各自治体が実施する減免制度の影響で、公営住宅の家賃が値上がりするケースも考えられます。 負担の「公平」理由に
一部の居住者とはいえ、高齢者の負担増につながるのは必至です。国交省と機構の担当者に「何とかならないんですか」と迫りました。 国も機構も、負担増に配慮して老年者控除の額を、〇五年度は五十万円、〇六年度は三十万円、〇七年度は十五万円と段階的に減らしていくとしています。しかし、〇八年度には全廃することには変わりません。 国交省の井浦さんは、「高齢者社会の進展から、負担の公平性を考えると、老年者控除を残しておくのは適切ではありません。地方公共団体の家賃減免などで対応すべきです」と答えます。都市再生機構の紀伊さんは「国の制度変更にしたがって対応するしかありません」と話しました。 全国公団住宅自治会協議会の井上紘一事務局長は語ります。 「国民が安心して住み続けられる政策こそ必要です。税制『改正』をすぐ居住者負担に波及させること自体、おかしい」 同時に実施された所得税の公的年金等控除の縮小も、家賃算定のための所得を引き上げることにつながります。増税や年金改悪…。高齢者を次々と負担増が襲っています。その上さらに公営・公団住宅の家賃値上げです。多摩自治協の興梠さんは「税金も家賃も上がる。まさに、ダブルパンチですよ」と憤りました。
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