2005年2月15日(火)「しんぶん赤旗」

ドイツ

大空襲60周年追悼集会に5万人

首相、歴史わい曲を批判


 【ベルリン=片岡正明】ドイツのドレスデンで十三日、第二次世界大戦での大空襲六十年にあたって集会が行われ、約五万人の市民が参加しました。

 集会は、市内中心部に立つ聖母教会前でろうそくをともし、犠牲者を追悼しました。しかし集会の前に、極右政党である国家民主党(NPD)が動員した約五千人が「連合軍の空爆テロを忘れるな」などのプラカードを掲げ、市内を行進しました。これに対し、極右に反対する人々は「ナチは出て行け」と叫び、一時警官隊をはさんでにらみあいとなりました。

 シュレーダー首相はこの日、声明で「第二次世界大戦の開戦、人間抹殺およびテロ行為に関しナチス・ドイツの責任はまったく否定できない」と述べるとともに、「歴史を解釈し直そうとする試みには可能なすべての手段をとる」「原因と結果を逆にする試みは許されない」と、極右勢力を批判しました。


ドレスデン大空襲 バロック様式の建造物が多く、北部欧州のフィレンツェとも呼ばれたドレスデンは、ナチス・ドイツ降伏前の一九四五年二月十三日夜、英軍の二波による爆撃と、翌日の米軍の爆撃で、市全域の85%が壊滅しました。公式数字で約三万五千人が死亡したとされます。


極右の進出に懸念

社会への不満や反感背景に

 ドイツでは、六十年前のドレスデン空爆を「爆弾によるホロコースト(大虐殺)」と主張する極右政党の国家民主党(NPD)の活動が懸念を広げています。

移民排斥主張

 NPDは、一九六四年に創設、その後に結成された共和党(REP)、ドイツ国民連合(DVU)と並ぶ極右政党です。ユダヤ人皆殺し政策などナチスの犯罪は「虚構だった」とか、外国人移民排斥を公然と主張しています。また各地で発生した外国人襲撃やユダヤ教会放火事件などとの背後関係も指摘されています。

 同党が、ドイツ東部州の一つであるザクセン州議会に議席を獲得したのは、昨年の州議会選挙でした。同時期に行われた東部州のブランデンブルク州では、DVUが議席を維持しています。

 NPDは一月中旬、二〇〇六年に予定される連邦議会(下院)選挙に同じ極右の共和党と共同名簿で臨むことを発表しました。今回のドレスデンでのデモだけでなく、五月八日のナチス・ドイツ降伏六十周年に向け動きを活発化しています。

非合法の動き

 旧東独部での極右進出の背景には、ドイツ再統一から十五年近くを経てもいまなお続く旧西独部との経済格差や、とくに20%に達する高失業に示されるように政治・社会への不満、反感があります。

 また、ドイツでは第二次大戦末期の連合軍によるドイツ各都市への無差別爆撃について、「ナチスの戦争行為の帰着」とのみ位置づけられ、連合軍側の責任追及がタブー視されてきたこともあります。

 極右政党の伸長に対して、NPDを法で禁止しようとする動きも強まってきました。

 ドイツの憲法にあたる基本法第二一条第二項では「その目的または党員の行為が自由な民主的基本秩序を侵害もしくは除去し、またはドイツ連邦共和国の存立を危うくすることをめざす」政党は「違憲とする」と規定されています。過去に、この規定で極右の社会主義帝国党(SRP)だけでなく、ドイツ共産党(KPD)も禁止されています。

 NPD禁止の動きは、〇二年にもありましたが、政府側の証人がNPD内部に潜入させた政府のスパイだったことが判明、連邦憲法裁判所での審理が中断した過去があります。与党内部からも、行政的な禁止によって極右進出の問題は解決しないとの指摘が起きています。

 夏目雅至記者



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