2005年2月12日(土)「しんぶん赤旗」

自民・民主改憲派

試案次つぎ

共通する軍隊の保持

集団自衛権行使を容認


 自民党は新憲法起草委員会(委員長・森喜朗前首相)のもと、「前文」「天皇」「安全保障及び非常事態」など十の小委員会を発足させ、四月末の試案取りまとめにむけ論議をはじめました。同時に、年明けから自民、民主の改憲派の改憲試案発表が相次いでいます。これに共通することは―。

 中祖寅一記者


 一月二十日には中曽根康弘元首相が、二月三日には民主党元代表の鳩山由紀夫衆院議員がそれぞれ改憲試案を発表。今週には民主党の米沢隆副代表ら旧民社党系議員を中心とするグループも改憲提言を出す予定です。

 相次ぐ改憲試案の発表は、改憲ムードを盛り上げるだけでなく、自民、民主の改憲案を先取りして、すり合わせる動きともなっています。

 実際、これらの改憲試案は、現行憲法九条二項の「戦力不保持」規定を削除し、「軍隊の保持」と「集団的自衛権行使」を容認するなどの点でまったく符合しています。

二項を削除

 自民党憲法調査会の改憲草案大綱(「たたき台」、昨年十一月発表)では、「自衛軍の設置」を明記。中曽根試案では、九条二項を削除のうえ、現在の自衛隊を「防衛軍」にするとしています。鳩山試案でも「自衛軍」の保持を明記しています。

 注目されるのは、九条二項の「戦力不保持」規定を削除することで、集団的自衛権の行使が容認されるという論理を展開していることです。

 中曽根試案では、「(九条)第二項において『戦力』の不保持を規定している結果…(集団的自衛権の)発動が否定されてきた」と説明。試案の解説では、二項を削除すれば、集団的自衛権行使については障害がなくなるとのべています。鳩山試案でも、「自衛軍」を保持する以上、「日本が国家の自然権としての個別的、集団的自衛権を保有していることについて議論の余地はなくなる」としています。

国際貢献

 自民党と民主党のわずかな違いは、「国際貢献」を口実にした海外派兵の際に、国連決議を必要とするかどうかです。

 自民党「たたき台」では、自衛軍が「国際貢献のための活動(武力の行使を伴う活動を含む)」を行うとし、「国連の活動だけに限定されているわけではない」と、決議不要の立場です。

 中曽根試案も、「国際機関及び国際協調の枠組みの下での活動に、防衛軍を参加させる」とし、「国連決議に依(よ)らない多国間の協力的枠組みも国際社会において機能することが必要とされうる」と同様です。

 これに対し、鳩山試案では、「国際連合その他の確立された国際的機構が行う平和の維持と創造のための活動に積極的に参加」とし、国際協力は国連ないし将来のアジア共同体などのもとでの活動に限定するとしています。昨年六月の民主党憲法調査会の中間報告でも、国連決議の下での集団安全保障活動には積極的に参加するという枠組みが示されています。

 しかし、国連決議がありさえすれば海外での武力行使もできるうえ、米国のための集団的自衛権の行使が可能とする点で一致している以上、実態はあまり変わりません。

 九日には、自民党の森前首相が、「わが国は平和憲法前文に書かれているように攻撃的なたたかいはできないんだということで、これからも洞が峠を決め込んでいて国際社会で信頼をされるのかどうか。このことが今度の憲法の一番のテーマだ」と語っています。改憲論の本音です。



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