2005年2月11日(金)「しんぶん赤旗」

サッカーW杯予選 日本−北朝鮮戦

成熟 サポーターがくれた感動

汚いヤジなし/北朝鮮選手の健闘に拍手


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熱く応援する日本のサポーター=9日、埼玉スタジアム

 冬の寒さが身にしみる夜、心の中は温かいままでした。

 9日、サッカーのワールドカップ(W杯)アジア最終予選、日本―北朝鮮戦でみせたサポーターたちの振るまいのおかげです。

 スタンドの所々に掲げられた多彩なプラカードはその象徴でした。

 「サッカーを通して手をつなごう」「日本へようこそ」「いっしょに2006年W杯へいこう」というものから、「政治はなしネ」というユニークなものまで。

 拉致問題など、日朝間の厳しい関係がある中での試合。「対決ムード」をあおったり、政治と結びつける報道もありました。しかし、ここには、スポーツに「政治」を持ち込むことなく、交流したいとの素直な思いがこめられていました。

 あるサポーターはこう話してくれました。

 「北朝鮮の人たちを歓迎することが、真のスポーツのあり方だと思った。北朝鮮という国には、いろんな問題があるけど、今日はまったく別。スポーツとは文化、言語の違いを超え、相手の文化を知り、尊重する場なのだから」=群馬・岡崎悟さん(28)。

 プラカードを掲げなくとも、高校生や会社員、若いカップルなど、それぞれが自分の言葉で同じ趣旨の話をしてくれました。

 実際、試合の中で汚いヤジはほとんど聞かれませんでした。北朝鮮選手が時折見せる素早いパスワークには驚きの声がもれ、試合を終えピッチを後にするときには、メーンスタンドで拍手し健闘をたたえる人々の姿がありました。

 「今日の試合は、とても友好的な雰囲気の中で開催された」。北朝鮮のユン・ジョンス監督もこう語っていました。

 サポーターはある意味、ジーコ・ジャパン以上の「成熟度」を見せてくれた気がします。それはこれまでの経験の積み重ねがあるからです。

 2002年の日韓W杯で、共催相手の韓国と新たな友情をはぐくみ、世界のサポーターを迎えることで、豊かな交流、応援のあり方を体験しました。

 昨夏のアジアカップでの、中国の一部観衆の暴走からも学んでいます。今回、多くのサポーターが「スポーツに政治を持ち込むべきでない」と例に挙げるのは、このときのことでした。

 「サッカーは偏見、風習などを打ち破る国際性がある。いい手本が世界にあり、そういう文化は経験を通して身につけていく」。サッカー・ジャーナリストの大住良之さんの言葉です。

 試合後、北朝鮮と日本の選手たち全員が、笑顔で握手を交わしました。

 スポーツ文化の確かな担い手となっているサポーターたち。今回、スタンドに設けられた「緩衝地帯」が少しずつ狭まって、日朝のサポーターが直接交流できる日も近い気がします。

 和泉民郎記者



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