2005年2月9日(水)「しんぶん赤旗」

息子を自殺においやった

連日残業、上司が「死んでみろ」

ヤマダ電機を遺族が提訴


 家電量販店最大手のヤマダ電機(山田昇社長、本社・群馬県前橋市)で一人の青年社員が自殺しました。遺族は、過酷な勤務が原因だとして、会社を相手取り損害賠償を求める裁判を一月二十五日、横浜地裁に起こしました。大型店展開で急成長する量販店で何が…。原田浩一朗記者

 自殺したのは、神奈川県内にある店舗に勤務していた契約社員の男性、Tさん(当時二十九歳)です。〇四年四月上旬、勤務時間中に、職場の近くで首をつっているのが発見されました。

 遺書は発見されていませんが、Tさんの両親は「息子が自殺したのは会社が過酷な労働を課し、安全配慮義務を怠ったため」としています。

既往歴もない

 訴状によると、Tさんはこれまで、学校や職場で社会生活や対人関係上の問題を生じたことはなく、精神疾患の既往歴もありません。

 Tさんは、以前勤めていたコンピューター会社が倒産したため、失業。新聞の社員募集広告をみて、ヤマダ電機に〇三年九月から契約社員として勤め始めました。

 仕事内容は商品管理でした。勤務時間は午前十時から午後七時までか、午後零時三十分から午後九時三十分まででした。

 ところが、勤め始めてから一カ月もたたないうちに連日のように三時間程度の残業が続くようになり、帰宅時刻は午後十一時すぎになることが多かった、といいます。

 専門学校で情報処理を学び、仕事はコンピューター関係しか経験がないTさん。商品管理は慣れないことに加え、十分な研修がされないまま、ミスもしばしばおこしました。上司から「てめえ、うそつきなんだよ」「死んでみろ」としかられていたのを複数の労働者が目撃しています。

 Tさんの自殺直後に、「上司からのいじめが原因ではないか」ということが労働者の間でうわさになりました。

体重10キロ減る

 厳しい業務命令が相次ぐなか、Tさんは、仕事をこなすために長時間勤務を余儀なくされていましたが、それでも仕事が間に合わず、自殺する直前に店長から、違う部署への配置転換を打診されていました。

 過酷な労働を物語るように、〇四年二月ごろのTさんの体重は、六十四キロから五十四キロと半年間で十キロも減少しました。

 別の店舗で働いていた労働者は、本来自分の責任のない問題で管理職から「お前バカか。死ねよ」とののしられた経験があります。

 警察を通じて、遺族の元に返された遺品のなかには、その日の帰りの電車の切符もありました。その日の朝、Tさんが購入していたものでした。

 提訴されたことについて、ヤマダ電機側は「訴状に記載されている内容は、調査した結果、現状において、そのような事実はない。当社の主張は裁判のなかで明らかにしていく」といいます。

 長男を失った父親(60)は「息子は、自殺する前日に車を買う契約をしてきました。自殺した朝はいつも通りでした。職場の朝のミーティングにもきちんと出ており、午前十時三十分には職場で姿を確認されています。私たち遺族は、息子を自殺に追いやった原因をなんとしても明らかにしたい」と話しています。



もどる
日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ

著作権についてリンクについてメールの扱いについて
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7  TEL03-3403-6111 FAX03-5474-8358 Mail:info@jcp.or.jp