2005年2月7日(月)「しんぶん赤旗」

核保有国は廃絶の約束守って

108カ国が非核地帯会議

4月に メキシコで初開催


 【メキシコ市=菅原啓】五月の核不拡散条約(NPT)再検討会議を前に、世界の非核地帯条約に加盟している百カ国以上の政府代表による初の非核地帯会議が四月二十六日から二十八日までメキシコ市で開かれることになりました。核兵器廃絶の運動に積極的に参加しているメキシコ政府の呼びかけによるもので、本紙が入手した会議の宣言案は、核兵器廃絶の重要性を改めて強調し、米国など核保有国に核兵器廃絶の「明確な約束」の履行を迫っています。

 前回のNPT再検討会議(二〇〇〇年)では、核保有国を含め核兵器廃絶に努力するという「明確な約束」が最終文書に盛り込まれました。世界の反核世論の高まりと途上国からの圧力をうけたものでした。ところが新しい小型核兵器の研究開発をすすめる米ブッシュ政権は、今回のNPT会議で過去の文書の死文化をはかり、「明確な約束」をほごにしようとしているといわれます。

 ブラジルやメキシコなど核兵器廃絶に積極的な諸国政府は、米国のこうした動きを強く懸念して国際的な連携を強めています。メキシコ政府によると、メキシコ市での会議に参加するのは、中南米(トラテロルコ条約)、南太平洋(ラロトンガ条約)、東南アジア(バンコク条約)、アフリカ(ペリンダバ条約)という四つの非核地帯条約に参加する国と非核国宣言を単独でおこなっているモンゴルの計百八カ国。核保有国や日本など非核地帯に加盟していない国々もオブザーバーとして招待されています。

 トラテロルコ条約の事務局組織で、今回の非核地帯会議を準備しているラテンアメリカ・カリブ海核兵器禁止機構(OPANAL)のバルガス事務局長(チリ)は、「非核地帯加盟国が一堂に会し、核兵器拡散の情勢に憂慮を表明し、核兵器廃絶の重要性を訴える初の機会となる」と語っています。

 宣言案は、「核兵器の全面的な廃絶と禁止を達成する必要性」を強調。前回の再検討会議での「明確な約束」を想起しつつ、すべての国がNPT条約第六条に定められた核軍縮の義務を果たすよう要求しています。


 NPT再検討会議 核不拡散条約(NPT)の運用を点検するため、七五年から五年ごとに開かれている会議。ことし五月二日からニューヨークで開催されます。NPTは、米国など五カ国の核兵器保有を容認しつつ、新たな核兵器保有国の出現を防止することを目的とした条約。不平等な条約ですが、核保有国に誠実な核軍縮交渉の義務を課しています。


非核地帯条約加盟国会議の最終宣言(案)

(要旨)


 四月二十六日からメキシコ市で開催される予定の非核地帯条約加盟国会議の最終宣言(案)の要点は次の通りです。

 一、核兵器は存在するだけで全人類への脅威であり、その使用は地球上の生命に破滅的な結果をもたらす。それゆえ、核兵器の全面的な廃絶と禁止が必要である。

 一、核兵器の廃絶と禁止には、すべての国家、とくに核兵器保有国の確固とした政治的意思が必要である。

 一、二〇〇〇年の核不拡散条約(NPT)再検討会議で核兵器国がおこなった自国の核戦力の完全廃絶の達成に対する明確な約束を想起しつつ、核軍縮が進展していないことに憂慮する。核兵器国を含むすべての国々がNPT条約第六条に定められた核軍縮義務を果たすよう要求する。

 一、新型核兵器の開発や核兵器使用の合理化を意味する、安全保障戦略の中での新たなアプローチを懸念する。

 一、核兵器の使用あるいは使用の威嚇は、国際法や国連憲章に違反するものであり、人類への犯罪である。

 一、核兵器を保有する五カ国に対し、非保有国に核の使用あるいは使用の威嚇をしない実効ある保証を要求する。

 一、現在の非核地帯条約の効力を大いに評価する。中東や南アジアでの非核地帯の確立を支持。中央アジアの五カ国が非核地帯の確立を決断したことを歓迎する。

 一、あらゆる核実験に反対する。核軍縮に貢献すべき核兵器国を含め、すべての国による包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名、批准が重要である。

 一、すべての国が核の平和利用の権利を有していることを確認しつつ、平和利用であることを検証する国際原子力機関(IAEA)の役割を重視。IAEAへの協力を確認する。

 一、放射性廃棄物の利用や運搬による事故や環境、安全上の危険性を憂慮。国際法にもとづく規則の強化や政府レベルでの情報交換を要求する。

 一、核の脅威のない世界の確立にとって、平和や軍縮、核不拡散についての教育も重要である。そうした教育プログラムの促進を各国に要請する。

 一、軍縮や核不拡散の分野においては、多国間主義、とりわけ国連の役割が重要である。



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