2005年2月6日(日)「しんぶん赤旗」

イラン核問題

独、政治解決に努力

米国務長官訪問 首相が会談後表明


 【ベルリン=片岡正明】訪欧中のライス米国務長官は四日、ベルリンでドイツのシュレーダー首相と会談し、イラン問題などについて話し合いました。

 イランは三年前にブッシュ米大統領が「悪の枢軸」と名指しした国の一つで、今年の一般教書でも「世界で最たるテロの提供者」と強く非難し、欧州諸国は米国が新たな先制攻撃戦争をしかけるのではと懸念を強めています。

 会談後の共同記者会見で、シュレーダー首相は「イランは平和的な核を利用する権利はある」とのべたうえで、核技術の核兵器転用問題では「欧州は民主的政治的解決をもたらすようすべての手段を尽くす」と政治解決の努力を表明しました。

 ライス国務長官は「(米国による)イラン政権転覆はあるのか」の質問に「今は外交が動く時だ」としながら、「イランは国際社会への義務を果たさなければならない」と強調しました。

 ライス長官はテレビのインタビューで「イランはテロの最大の資金提供者」と非難し、将来のイラン攻撃について「確認もせず、否定もせず」という態度です。イラク攻撃は「今の時点では検討していない」とした「今の時点」との限定つきのライス発言について、欧州側から「明確でない」(欧州委員会外交担当報道官)との声があがっています。

 他方、シュレーダー首相は四日の共同記者会見で、イラク警察と軍の訓練のために派遣するドイツ軍はアラブ首長国連邦にとどまり、イラク派兵はしないことを再確認。米国がアフガニスタンで実施している軍事作戦の肩代わりを求めてきていることに対しても「アフガン関与の任務の変更はしない」とのべて、国連決議で決定された国際治安支援部隊(ISAF)の任務にとどまることを表明しました。

 ライス長官は五日、ベルリンを離れ、ポーランドのワルシャワ入りしました。同長官はベルカ首相らとイラク問題などについて協議、同日中にトルコに向かいます。


解説

米「変革戦略」に欧州巻込み

 就任後初の外国訪問で三日から欧州を訪れているライス米国務長官は、その目的を「民主主義と自由が平和と繁栄のカギだとするブッシュ大統領のビジョンを推進するため」(米国務省のウェブサイト)と語っています。テロとのたたかいや大量破壊兵器拡散の問題について話し合い、共通の課題を確認するとしており、第二期ブッシュ政権の外交戦略を具体化するのがが狙いです。

 ライス長官のいう「大統領のビジョン」の基本は、イラク侵略戦争・占領の「成功」を宣伝しながら、さらに世界の「変革」を追求するというもの。「自由」といい、「民主主義拡大」といいますが、それはあくまでブッシュ大統領流の「価値観」にもとづくものです。

 とくに今回の欧州訪問で、ライス長官が課題としているのは、ブッシュ大統領が二日の一般教書演説で強調した「中東地域の民主化」「改革」戦略に欧州諸国を巻き込むことです。

 その中でも重視したのは名指しで「テロ支援国家」と呼び、露骨な「体制変革」まで呼びかけたイラン対策です。

 ロンドンでの会見でライス長官は「現時点ではイラン攻撃は検討されていない」といいました。しかし、それは将来にわたって軍事攻撃を考えないということではまったくありません。そのことは、長官が「今の時点で」と強調する一方でわざわざ「イランも中東地域の変化と無縁ではない」と語ったことからも明らかです。

 中村美弥子記者



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