2005年2月2日(水)「しんぶん赤旗」

ネパール国王が全権掌握

内閣解散、共産党幹部ら軟禁


 【ニューデリー=小玉純一】ネパールのギャネンドラ国王は一日、国営ラジオ放送で、デウバ内閣を解散し、今後三年間全権を掌握すると発表しました。事実上の王室クーデターです。

事実上のクーデター

 非常事態宣言も発せられ、国王は軍隊を政府庁舎や電話局、銀行など要所に配置。装甲車が動き回っていると伝えられます。また何人かの政党幹部を軟禁しました。昨年七月に入閣したネパール共産党(統一マルクス・レーニン主義=UML)の指導者も含まれているもようです。

 首都カトマンズと外国との間では、電話回線を含むすべての通信手段が遮断されています。

 国王は内閣解散の理由に「四月までの選挙実施準備に失敗した」ことを挙げ、政党が派閥争いにあけくれているとして、自分が議長として政府をつくると述べました。

 王制廃止を掲げて武装闘争を続ける毛沢東派と国軍との間で戦闘が繰り返されてきた同国では、デウバ首相が停戦をよびかけていました。毛派はそれを無視。首相は二〇〇二年から解散されたままの国会の選挙を四月までに行うとしました。しかし、停戦なしの選挙が成功する保障がないことが広く指摘され、政局は混迷していました。

 王制復権を狙う国王がこれに乗じて権力奪取に出たとみられます。国王の暴挙に反対する各党と国民の反発が広がりそうです。


解説

国王復権を狙った暴挙

 今回の国王による権力奪取は、軍の力に依拠して行われました。そこには一九九〇年の国民的規模での民主化のたたかいで大きく規制された王室の権力回復の狙いがみえます。

 国王の行動の背景には、「人民戦争」路線で王制廃止を主張する毛沢東派が武装闘争を拡大するのに対して国王が掌握する国軍が軍事作戦を進め、政治社会情勢がますます不安と混迷を深めてきた状況があります。

 デウバ首相は昨年十一月、毛沢東派に停戦・和平交渉の再開を呼びかけ、一月十三日を回答期限としていましたが、毛派はこれを無視しました。同首相は、毛派粉砕を宣言し、毛派抜きで総選挙を今春に実施する意向を表明。毛派は武装闘争をさらに拡大し、国民の間で不安と危機感が深まっていました。

 ネパールでは長い間、国王支配体制が続いていましたが、九〇年の民主化運動がこれを変えました。新たに定められた憲法は、「ネパールの主権はネパール国民に存する」(第三条)として国民主権を明記。立憲君主制、複数政党制が確立されました。

 同憲法下での総選挙では、民主化運動で連携した左翼勢力、ネパール共産党(統一マルクス・レーニン主義=UML)主導の政府が樹立された経過もあります。

 これに対し王室は復権を狙う動きを続けてきました。二〇〇一年に登場したギャネンドラ現国王は露骨な政治介入に着手。翌年、首相と全閣僚を解任しました。しかし国民の抗議の声に押された国王は、〇四年六月、自分が解任したデウバ氏を首相に再任命しました。

 ネパール共産党(UML)はデウバ内閣に参加しましたが、毛派の武装闘争を批判しつつ「停戦と和平協議しか危機打開の道はない」(同党幹部アディカリ副首相)とし、話し合いによる事態打開を主張してきました。それは、国民の多数に現実的な提案として受け入れられています。

 国王の暴挙は、国政の不安を理由にしているものの、実際には国民が求める民主主義の発展に逆行するものであり、政治のいっそうの混迷は避けられません。(ニューデリー=小玉純一)



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