2005年1月27日(木)「しんぶん赤旗」

市田書記局長の代表質問

参院本会議


 日本共産党の市田忠義書記局長が二十六日の参院本会議で行った代表質問(大要)は次のとおりです。


 私は日本共産党を代表して小泉総理に質問します。

戦後60年――「二度と戦争はしない」が日本の原点 

 今年は「戦後」六十年、被爆六十年の重要な節目の年であります。

 「戦後」の原点とはなんだったでしょうか。

 六十年前、世界は、数千万人の人々の尊い命を奪った、日本と、ドイツ、イタリアが起こした侵略戦争を厳しく断罪いたしました。「こんなことは二度と起こしてはならない」、戦後の世界はこの決意から出発しました。そして、この立場は国連憲章の土台になりました。日本が、新しい憲法をつくり、「二度と戦争はしない」と世界に向かって公約し、世界に先駆けた恒久平和主義の決意を表明して国際社会に復帰したのも、この原点にもとづくものであります。

 日本が国連に加盟をした一九五六年十二月の国連総会で、当時の重光葵(しげみつ・まもる)外務大臣は、「日本国民は…政府の行為によって再び戦争の惨禍がおこることのないように決意し」など、憲法前文を読み上げたうえで、「以上が日本国民の信条であり…この日本国民の信条は完全に国際連合憲章の目的及び原則に合致するものであります」と述べました。総理、今日の世界の秩序は、日・独・伊の侵略戦争への厳しい断罪のうえにつくられたこと、日本もその立場を受け入れて国際社会に復帰したこと――この認識を、あなたはお持ちですか。

憲法9条はいまや国際関係を律する原則世界とアジアの共有財産

 総理は自民党の党大会で「新しい時代にふさわしい新憲法制定」の草案を年内にまとめ上げると言明されました。なにが新しい時代にふさわしいのか。

 昨年わが国は、「東南アジア友好協力条約」に加盟しました。いまやアジアの十七の国と地域、人口にして三十三億人、実に地球人口の五割以上が加入しているこの条約には締約国同士を律する六つの基本原則が定められています。なかでも重要なのは、「意見の相違または紛争の平和的手段による解決」「武力による威嚇または武力の行使の放棄」の原則であります。

 憲法九条はいまや、国際関係を律する原則として、世界とアジアの共有の財産となっており、まさに新しい時代にふさわしいものであります。

米国の先制攻撃戦略につきしたがい平和の流れに逆らうのか

 ところが政府は、イラク戦争のようなアメリカの先制攻撃戦略につきしたがい、憲法および世界とアジアの平和の流れに真っ向から逆らう道を歩み続けています。

無法な侵略戦争――イラクから直ちに撤兵せよ

 第一は、イラクへの自衛隊の派兵と、派遣期間の一年延長の決定であります。

 イラクに大量破壊兵器が存在しなかったことをアメリカ自身が認めるに及んで、イラク戦争はアメリカによる無法な侵略戦争であることがだれの目にも明らかになりました。テロとの戦いを理由にあげていますが、米軍のファルージャ攻撃は、国連のブラヒミ特別顧問が「アメリカとアラウィ(イラク暫定政府首相)は五十人殺すことで五百人の抵抗運動活動家をつくりだした」と述べたように、いっそう混乱を広げ、いまや選挙の実施と正当性に重大な疑問を抱かせるにいたっています。イラクに駐留する国は、相次ぐ撤退によって、かつての三十七カ国から二十カ国になろうとしています。大野防衛庁長官は、昨年十二月十三日の衆議院テロ対策特別委員会で、浄水のニーズはなくなると公式に認めています。

 総理、憲法九条をもつわが国の自衛隊をこれ以上イラクにとどめておく理由は何一つないではありませんか。直ちに撤兵することを求めます。

「新防衛大綱」は武力行使放棄の原理に反する

 第二は、昨年暮れに決定した「新防衛大綱」で、「国際的な安全保障環境を改善してわが国に脅威が及ばないようにすること」、そしてそのために、「同盟国との協力」をかかげたことであります。

 「同盟国との協力」とはなにか。これはイラク戦争への自衛隊派兵に明らかなように、アメリカの先制攻撃戦略に、いつでも日本の自衛隊をつきしたがわせることです。そしてその具体化のために、海外派兵を自衛隊の中心任務にすえる自衛隊法の改悪までたくらまれています。

 これは、憲法九条に反するだけでなく、「紛争の話し合いによる解決」と「武力による威嚇、武力の行使の放棄」を基本原理とする東南アジア友好協力条約にも真っ向から対立するものではありませんか。総理の答弁を求めます。

弱肉強食、もうけと効率だけ重んじるのでなく一人ひとりが大切にされる連帯の社会を

 つぎに国民の暮らしについてであります。

 小泉内閣の三年九カ月、国民の暮らしと社会はどうなったでしょうか。

 四年前には聞かれなかった言葉に、「勝ち組」「負け組」という言葉があります。あなたの政治の結果をもっとも端的にあらわすものであります。一握りの大企業と大金持ちだけがうるおい、額に汗して働く勤労者、働こうにも職のない多くの若者、戦後の大変な時代から日本社会の発展に貢献してきたお年寄りなど、圧倒的な国民が「負け組」にされ、いまの暮らしだけでなく、将来も脅かされているのです。その結果、社会の基盤がゆがみ、世相が殺伐としているのです。こんな社会に未来はありません。

 いま政治にもっとも求められていること、それは、弱肉強食、もうけと効率だけを重んじるのでなく、国民の目線に立って、一人ひとりの人間が大切にされる、連帯の社会を築くことであります。

定率減税の縮小・廃止など――4人家族で負担増20万円超

 ところが政府がやろうとしていることは何か。所得税の20%、住民税の15%が減額されていた定率減税の縮小・廃止による大増税、年金保険料や雇用保険料の値上げ、年金生活者への課税強化、年収わずか百万円台のフリーターからも税金を取り立てるフリーター課税、介護保険料・利用料の値上げ、国立大学授業料の値上げ等々、まさに「老いも若きも負担増」のオンパレードであります。その結果、これからの二年間に国民が新たに負わされる負担は、総額で七兆円、一人当たり五万円、四人家族で二十万円以上にもなるのです。

 定率減税は、小渕内閣のときに、法人税率の引き下げと大金持ちの最高税率の引き下げとあわせておこなわれました。大企業と大金持ちの税負担はかつてないほど軽くなっています。ところが、庶民減税はやめて増税をするが、大金持ちと、リストラやサービス残業の押し付けなどで大もうけしている大企業への減税には手をつけていません。定率減税は暫定措置だからといいますが、それならどうして庶民減税が暫定で、金持ちと大企業は恒久減税なのか。これを弱いものいじめの政治といわずしてなんというのでしょうか。

 この間の長期にわたる大不況の原因は、橋本内閣の九兆円負担増の押し付けで、国民の消費が一挙に冷え込んだためでした。

国民の所得は減――7兆円負担増で経済・財政破たん

 しかし、あの時はまだ、まがりなりにも景気は回復しつつありました。家計の所得は、年間五兆円から六兆円の規模まで伸び続けていました。

 ところが、いま国民が使える所得は、内閣府の調査でも、一昨年までの六年間で十四兆円も減り、それを補うために取り崩された貯蓄は、実に九兆円にもおよんでいるのであります。そこに、先ほど述べた七兆円もの新たな負担増をかぶせたら、橋本内閣のとき以上に暮らしと経済がメチャクチャになること、そしてそれによる税収の落ち込みによって一層の財政破たんにすすむことは、火を見るより明らかではありませんか。あなたはそうならないと断言できますか。

無駄な公共事業メスを入れよ

 財政が大変というなら、無駄な超大型公共事業にこそメスを入れるべきであります。たとえば、関西国際空港の二期工事。いまでも利用が減っているのに巨額の税金を投入して拡張する必然性はありません。少なくとも、相次いで開港予定の中部国際空港、神戸空港の需要動向を見極めるまで中断すべきではありませんか。答弁を求めます。

 以上述べたように、日本共産党は、大増税、負担増をやめ、庶民の家計を応援して、経済を健全な発展の軌道に戻す、巨大開発のムダ遣いを本気で一掃する、大企業と大金持ちに力に応じた負担を求める、など、大企業中心から、国民生活中心の経済政策に転換することを強く求めるものであります。

参院改革――言論の府にふさわしい 審議の場に 

 最後に、参議院のありかたについて一言述べます。

 参議院改革として、ODA(政府開発援助)改革や決算重視の課題が中心的に取り組まれてきました。ODAについての本院の調査は、問題提起の一助となりました。決算重視の姿勢は、政府に決算の提出時期を早めさせるなど前進しました。

 同時に、いま、参議院改革の最も重要な課題は、参議院を言論の府にふさわしい審議の場にすることです。

10人未満会派の発言機会制限は問題

 本院は、四十年も前の申し合わせにより、議員数・十人未満の会派は、著しく発言機会が制限されています。本会議場での質疑は、通常国会の施政方針に対するものと、決算への質問が認められるだけで、その他の議案については、どんなに重大な案件であっても本会議質問の機会が与えられない運営が長きにわたっておこなわれてきました。

 今国会には、先に述べた大増税・負担増をはじめ、自衛隊法の改悪や、改憲の地ならしともいえる国民投票法案など重大な法案の提出が予定されています。世論調査では「憲法九条を変える必要はない」という人が六割から七割にも上っています。大増税路線にも強い批判の声があがっています。そうした国民の意見を審議に反映させてこそ、言論の府としての役割が発揮できるのではないでしょうか。

 それこそ、いま、何よりも求められる参議院改革であることを強く指摘して、私の質問を終わります。


市田書記局長への小泉首相の答弁(要旨)

 市田忠義氏にたいする小泉純一郎首相への答弁(要旨)は次のとおりです。

 〔戦後のわが国外交に関する基本認識〕 わが国は、先の大戦への反省に立ち、これまで経済大国になっても軍事大国にはならない、平和主義を貫きながら、ODA(政府開発援助)や国連分担金などの資金面でも、国連平和維持活動などの人的貢献の面でも世界の平和と繁栄に積極的な役割を果たしてきた。

 紛争の平和的解決や武力による威嚇または武力の行使の禁止の原則は、憲法第九条や東南アジア友好協力条約のみならず、国連憲章にも見られる、国際関係を律する原則として広く共有されていると考えている。

 〔自衛隊〕 今後のイラクにおける政治プロセスを円滑に進展させるためにも、国際社会がイラクにたいする支援を継続することが必要であると思う。自衛隊派遣はそのような目的をもって実施しているものであり、自衛隊の部隊は憲法の範囲内でイラク特措法に定める人道復興支援活動をおこなっている。これまでの活動は現地の人々から、イラク暫定政府からも高い評価を受けている。適切な警戒や危険回避の措置をとり、隊員の安全確保に万全を期しつつ、自衛隊の活動を継続してまいる。

 新防衛大綱は、自衛隊の任務における国際平和協力活動の位置づけを含め、所要の体制を整えるとしている。これは自衛隊が国際平和協力活動に主体的かつ積極的にとりくむための措置であり、米国の政策に自衛隊を従属させるためのものではない。自衛隊が海外での活動として、武力行使や他国による武力の行使と一体化するような活動などを実施しないことは当然である。こうした活動は、憲法や東南アジア友好協力条約との関係で問題が生じることはないものと考える。

 〔めざすべき社会について〕 私どもがすすめる構造改革というのは、自助と自立の精神のもとに努力がむくわれ、安心して再挑戦できる、明るい社会の実現をめざすものである。

 これまで、新規企業の促進策、構造改革特区や都市再生など地方の意欲や挑戦を尊重した地域経済の活性化策、持続的な制度の構築にむけた社会保障制度改革などにとりくんできた。ひき続き改革を進めて活力ある経済社会の構築にむけて全力でとりくむ。

 〔各種の負担増が経済に与える影響〕 それぞれの制度改正による個々の負担増のみをとりあげて議論することは適当ではない。経済全体のなかで総合的に考えるべきものである。経済見通しは、企業部門が引き続き改善することを背景に、景気回復が雇用、所得環境の改善を通じて、家計部門へ波及する動きが強まり、消費が着実に増加すると見込まれていることから、引き続き、民間中心のゆるやかな回復を続けると見込んでいる。

 〔定率減税の見直しと個人所得課税の最高税率、および法人課税の実効税率の引き下げ〕 平成十七(二〇〇五)年度税制改正においては、景気対策のための臨時・異例の措置として継続されてきた定率減税について、導入時と比較した経済状況の改善等を踏まえ、その規模を二分の一に縮減することとした。他方、個人所得課税の最高税率、および法人課税の実効税率の引き下げは、わが国経済社会の構造変化に対応した抜本的な税制改革の一部先取りとして実施されたもので、単純な景気対策である定率減税とは位置づけが異なる。

 〔関西空港二期事業〕 平成十七年度の公共事業予算については、全体として3・6%削減したところであり、関西国際空港二期事業についても、削減した公共事業の枠内で計上したものだ。関西国際空港の需要については、関西圏における伊丹、神戸空港の役割分担を明確化したうえで、中部国際空港や神戸空港の開港の影響を考慮して精査を行い、二〇〇七年度には二本目の滑走路を必要とする十三万回程度の発着回数に達すると見込んだ。さらに厳しい財政事情を踏まえ、必要不可欠な事業に限定し、二〇〇七年に二本目の滑走路を供用するとした。



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