2005年1月26日(水)「しんぶん赤旗」

激増する重大労働災害

職場問題研究チーム (2)


(2) 極限までの要員削減の末

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1901年に日本で初めて火入れされた官営八幡製鉄所(現新日鉄八幡製鉄所)の東田第1高炉=北九州市

 労働安全衛生法と関連法令が完全に順守されていない問題とも関連しますが、激増する労働災害の根源には、利潤第一主義に支配された大企業の極限までの要員削減があります。

 この間、日本の大企業は、グローバル化(地球規模化)する経済のもとで、国際的な企業間競争を勝ち抜くために、国際競争力の強化を旗印にして、徹底したコスト削減を強行しています。いうまでもなく、国際競争力にもっとも大きな影響を与えるのは為替調整です。それがあたかも高コストにあるかのようにいって、労働者に賃金抑制とともに、極限までの人減らしを押しつけています。その結果が、労働災害の激増という形であらわれているのです。

 もともと、日本の大企業は、ヨーロッパでは考えられないような生産計画・要員計画を立て、要員を異常なまでに少なくしてきました。一九九〇年代はじめに日本共産党が「労働基準法の抜本改正」を提案した際に、この問題について明らかにしたことですが、ドイツでは生産計画を立てるとき、要員については、基本的に残業をしないことはもちろん、有給休暇の100%取得、病欠まで考慮して、「欠勤率」を15―17%ぐらいは見込んで要員計画を立てます。ところが、日本の大企業は、当時でも「欠勤率」を5%程度しか見込まないのが普通になってきたのです。

 九〇年代後半に入って本格化した今日のリストラ・人減らしの最大の特徴は、それまでもギリギリだった要員を、さらに極限まで削減していることです。

 たとえば新日鉄です。新日鉄の粗鋼生産高との対比で、人員削減の動向を見てみましょう。新日鉄の粗鋼生産高は、七〇年代後半から三千万トン台を維持し、八〇年の三千百六十八万トンを最後に、八一年から〇二年まで二千万トン台で推移してきました。〇三年には、三千十四万トンと三千万トン台に“復活”しています。

 これに対して、労働者はどうでしょうか。本工と関連・下請け労働者を合計した労働者数は、いくつかの資料から計算した八四年と二〇〇二年のデータを見ると、八四年には十一万四千五百人いた労働者が、〇二年には半数以下の五万三千五百人に激減しています。

 二十年近くの間に、一人当たり粗鋼生産高は二・一六倍に増え、労働者は半数以下にまで削減されているのです。この間の技術革新によって、生産性が向上し、省力化が進みましたが、それだけでは説明することのできないデータです。極限を超えるほどまでの要員削減が強行されてきたことを示す、なによりの証拠といえます。

 「新日鉄、事故死SOS」という見出しで、「朝日」(〇三年十一月二十六日付)が、「高水準の生産に、大幅リストラされた現場が追いつかない可能性が浮かび上がった」と、大きく報じたのも当然のことでした。

 技術革新下のリストラによる要員削減は、労働者に長時間・過密労働を強いることにつながっています。

 EU(欧州連合)の労働安全衛生指令では、労働時間法制も労働安全衛生の枠組みの一つに位置づけられています。「長時間労働はしくじりや間違いを増加させる傾向」があり、事故に結びつく危険が高いと欧州委員会は結論づけています。つまり、長時間・過密労働は労働災害発生の“温床”になっていることを明らかにしたのです。

 EUでは、こうした見地から、平均週労働時間は時間外労働を含み四十八時間が原則とされています。しかし、日本は週六十時間以上働く労働者は八百万人を超える状況です。大企業職場では、要員がぎりぎりにまで減らされたため、有給休暇や病休で一度に二人が休むと仕事がこなせなくなるということで、当日になって有休を返上して出勤させる状況さえ生まれています。少々の病気なら出勤しなければならない職場状況が日常的につくられているのです。

 下請け・関連の場合はいっそう深刻です。鉄鋼の下請け職場では、夜勤を含めた十二時間連続作業が月十日も組み込まれるのが普通になっている状況があります。作業はしごから転落し、負傷するという常識では考えられないような労働災害が起きましたが、それはこうした長時間労働と無関係ではありません。

 (つづく)



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