2005年1月25日(火)「しんぶん赤旗」

激増する重大労働災害 (1)

職場問題研究チーム


連載の目次

1、死傷者12万5千人以上
2、原因はどこにあるのか
3、根絶にむけた緊急要求
4、たたかいの新しい条件と広がり


1 死傷者12万5千人以上

写真
爆発したガスタンク(左側)が赤茶色の残がいとなっている新日鉄名古屋製鉄所=04年撮影

 労働災害の激増によって、労働者のいのちが脅かされる深刻な状況が広がり、重大な社会問題になっています。厚生労働省の二〇〇三年調査によると、労働災害による死傷者数は十二万五千七百五十人にのぼります。しかし、この統計は、労働災害の実態を正確に反映したものではありません。労働災害があっても届け出をしない“労災隠し”があるからです。二〇〇一年からの三年間で“労災隠し”が明らかになり、送検された件数は三百二十九件と過去最高になっています。昨年十二月には、鉄鋼大手のJFEスチール東日本製鉄所千葉地区で四件もの“労災隠し”が発覚しています。

 重大なことは、こうした不十分な統計によっても、一度に三人以上が死傷する重大災害が増加傾向にあり、〇三年は九五年以降史上最悪の二百四十九件を数えていることです。〇四年も十一月七日現在、死亡者は前年を上回る千二百三十三人に達しています。

 この間、日本を代表するような大規模製造業の職場で、工場近辺の市民にも影響を与えるような爆発・火災等の大きな災害が連続しています。

 〇三年には、新日本製鉄名古屋製鉄所のコークスガスタンクによる爆発災害、栃木のブリヂストン・タイヤ工場における大規模火災、エクソンモービル名古屋と出光興産北海道の両油槽所における火災が続発しました。

 〇四年も、関西電力美浜原子力発電所で配管の破損によって、十一人もの死傷者を出す重大災害が起きました。

 新日鉄では、〇四年一月から十月までに四人死亡、三十四人が重傷を負うなど休業災害(協力会社含む)が後を絶ちません。JFEスチールでも、〇四年に社員と協力会社の休業災害が四件の死亡を含め二十三件発生しています。工場火災を引き起こしたマツダでも、火災直前に労働者の死亡災害が起きています。

2 原因はどこにあるのか

 労働災害が起きると、会社は、「本人の不注意」にしたり、「ルールを順守した確実な作業をせよ」などといい、あたかも「ルール」を守らなかった労働者に責任があるかのようにいいます。

(1)生産優先し安全法守らず

 しかし、職場は、生産工程のME(超小型電子工学)化、コンピューター制御システムの導入によってラインはスピードアップされています。

 その一方で、要員が極限まで削減され、長時間・過密労働が常態化しているもとで、企業が「生産優先」で労働安全衛生法をはじめとした法令や省令・ガイドラインをきちんと守っていません。それが労働災害激増の重要な原因の一つになっているのです。

 たとえば、大規模火災を引き起こした自動車タイヤ工場では、工場内の各所に設置されている火災探知機が火災でなくても高温の空気が流れたときたびたび作動し、作動のたびに持ち場を離れて対応すると、生産に支障を来すからということで、いくつかの探知機のスイッチが切られているという状況があったといわれています。

 「生産優先」のもとで、探知機のスイッチが切られていたり、探知機がなってもすぐには対応しないような状況がありました。それが消火活動の初動の遅れにつながり、近辺の住民にも被害を与えるような大規模火災になったのです。

 ある大手製鉄所では、夜勤で発生したトラブルの事故処理のため、「圧延油クリーンタンク」の見回りにいった労働者がタンク内に落ちて死亡しました。労安法では、墜落危険個所については囲いなどを設けることになっていますが、設けられていませんでした。

 「機械の包括的安全基準」を無視した労働災害も後を絶ちません。ある自動車メーカーでは、大型プレス機械を使用して自動車部品の折り曲げ作業を行っていた際に、プレスの背面側で作業していた労働者が何らかの理由で金型内に入り、頭部をはさまれて死亡しました。安全装置は設けられていましたが、その装置が金型内に入った労働者を検出することができなかったのです。安全基準どおりに、金型内の全域を監視する安全装置を使用していれば防止できた災害でした。(つづく)



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