2005年1月20日(木)「しんぶん赤旗」

長井証言に説得力感じる

改ざんNHK番組 出演者語る


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国会内で開かれた「NHK問題に関する緊急記者会見とアピール」の会=18日

 安倍自民党幹事長代理(当時官房副長官)と中川経済産業相が「戦争をどう裁くか」シリーズの第二回「問われる戦時性暴力」(NHK教育テレビ、二〇〇一年一月放送)に介入、圧力を加えたことが問題になっています。高橋哲哉・東京大学教授と米山リサ・カリフォルニア大学準教授のこの問題についての発言を紹介します。高橋さんは四回を通し番組のコメンテーターをつとめ、大改ざんを経験しました。米山さんは二、三回のコメンテーターでしたが、その発言の多くが削除されました。十八日に開かれた「NHK問題に関する緊急記者会見」での高橋氏の話、米山氏が「メディアの危機を訴える市民ネットワーク」を通じて寄せたコメントを紹介します。



事件直後から介入のうわさ

東京大学教授

高橋 哲哉さん

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 番組の手直しには二段階ありました。第一は、制作会社とNHK教養番組部とのやり取りです。私はここにはかかわっていません。一月二十七日、長井さんらから「新しい撮影をさせてほしい」と修正台本が送られてきました。女性国際戦犯法廷の判決や被害者、加害者証言も残っており、番組の基本的趣旨は維持されていると判断、「追撮」に応じました。それが二十八日です。

 しかし、第二段階の二十九、三十日には大改ざんが行われた。肝心なことがほとんど削られていた。放映を見て、あぜんとしたわけです。事件直後から、政治家の介入のうわさはありましたし、番組制作局長だった伊東律子さんが、自民党から圧力を受けたのではないか、という報道もされています。異常な圧力が加わったという実感がありましたから、長井さんの証言には説得力を感じます。これまでブラックボックスだったところが見えてきたのです。

 安倍氏や中川氏の発言からも、政治的圧力があったことはもはや否定できません。今、長井さんを守るということは、真実を明らかにすること。NHK教養番組部の人たちも悔しい思いをしているはずです。ジャーナリズムは第二、第三の証言を強くはたらきかけてほしい。NHKで真実を知っている人は、長井さんに続いて、良心をかけて真実を語ってほしいのです。


長井さんの声に こだましよう

カリフォルニア大学準教授

米山 リサさん

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 「女性国際戦犯法廷」をあつかったNHK番組「戦争をどう裁くか」第二夜は、当初の企画と異なる改ざん番組として放映されました。その背後に与党政治家の圧力があったという事実が、四年もの年月を経て明らかになりました。このことを報道機関の方々にたいして明らかにしてくださった、NHKプロデュサー長井暁さんの志を無駄にしないために、その声にこだましようではありませんか。

 当番組は、世界の平和と共生を模索する二十一世紀の日本社会の行く末を根底から左右する問題をあつかうものでした。まさに公共放送があつかうにふさわしいものでした。その番組が、日ごろから極右的なイデオロギーをふりかざし、歴史を修正しようとする与党政治家の圧力と、それに屈したNHKの一部幹部の手によって、改ざんされてしまったのです。

 この事実が明らかになった以上、NHKを脅迫した政治家と、追随したNHK幹部は、公共放送の責任を放棄してしまったことを、視聴者に謝罪するとともに、法廷に参加した彼女たちを貶(おとし)めるような番組に、その姿や声を使ったことをすみやかに謝罪すべきです。

 長井プロデューサーの会見は、閉塞(へいそく)し批判力を失う日本のメディア界に鋭い警鐘を打ち鳴らすものです。閉ざされた重い扉を押し開くのは私たち一人ひとりです。



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