2005年1月13日(木)「しんぶん赤旗」

ノロウイルスって何?

国立感染症研究所 宮村達男さんに聞く

感染力が強い 吐物や便にも

手洗い十分に 水分の補給を


 ノロウイルスが原因とみられる感染症胃腸炎が各地の高齢者施設などに被害を広げています。ノロウイルスの特徴や、感染しないための対策などを、国立感染症研究所ウイルス第二部部長の宮村達男さんに聞きました。


 ノロウイルスは、素焼きのつぼを通すほど小さく(平均の大きさは三八ナノメートル、一ナノメートルは十億分の一メートル)、普通の顕微鏡で見ることはできません。ウイルスは、細菌のように自己増殖することができません。ノロウイルスは人間の体の中でだけ増えるという特徴があります。

 ノロウイルスの感染は、多くは口からです。汚染された貝類などを、生または十分加熱調理しないで食べたり、感染者の手洗いが不十分なまま製造・調理した食品を食べたりすることによって感染します。また、感染者のふん便や吐いた物をとおして人から人に感染することもあります。

冬に多発

 ノロウイルスによる感染症は、一年を通して発生しますが、冬に多いという特徴があります。低温のためウイルスが生き残りやすいからだと考えられます。また冬は生カキなどの消費量が多いことも原因の一つかもしれません。カキなどの二枚貝は、海水中のウイルスをとりこみ濃縮していますからね。

 ノロウイルスによる感染は、ここ数年急増しているようにみえます。二〇〇二年の食中毒発生状況を原因物質別にみると、患者数は第一位です。しかしこれは診断法が進歩し、原因不明の腸管感染症のなかでノロウイルスによる感染を正確に診断できるようになったためです。

 ノロウイルスに感染すると(潜伏期間は二十四時間から四十八時間)、吐き気や下痢、腹痛などの症状が表れます。熱はセ氏三八度台で、インフルエンザなどと比べて軽度です。感染しても発症や発熱がない場合や、軽い風邪のような症状の場合もあります。症状は一日から二日で治まりますが、その後もしばらくは便にウイルスが排出されます。

 嘔吐(おうと)や下痢は、異物から体を守るための反応です。むやみに抑えるより、脱水症状を起こさないよう水分の補給に気を付けることが大切です。しかし、高齢者や乳幼児には大きな負担になりますから、病院で適切な処置を受ける必要があります。

加熱する

 ノロウイルスは、感染力が強く、少量でも感染します。トイレの後や食事の前の手洗いはしっかりおこないましょう。とくに食品を扱う人は、せっけんを使い手全体をていねいに洗うことが大切です。まな板などの調理器具もよく洗いましょう。食品に含まれるノロウイルスは、八五度以上で一分間以上加熱すれば感染性がなくなります。

 下痢が続いたら、ノロウイルスを疑って早く正確な診断をしてもらい、適切な治療を受けることが必要です。

 下痢便や吐物の処理には細心の注意が必要です。よくふいた後、塩素系漂白剤で消毒するとよいでしょう。



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