2005年1月8日(土)「しんぶん赤旗」

フランスの路上生活者

相次ぐ凍死に支援の手

宿泊施設 気温を基準に3段階で


 フランスでは、寒さの厳しい真冬ともなると社会的に排除された路上生活者が凍死する事故が相次ぎ、これを防ごうと行政と市民団体がさまざまな対策に取り組んでいます。


市民団体とも連携して対応

 政府は昨年十一月、各県の緊急電話「一一五番」の対応チームを強化し、気温に応じて宿泊施設の増減を調整するなど、市民団体とも連携して必要な対応をとることを明らかにしました。これは十一月からことし三月末までの期間の特別措置で、気温を基準に三つのレベルが設けられています。

 第一のレベルは、全国に九万床ある宿泊施設を気温にかかわりなくホームレスに開放するもので、これは年間を通じて利用できます。

 第二のレベルは、日中の最高気温が零度前後、夜間の最低気温が氷点下五度から一〇度の「大寒」になる場合で、宿泊施設を増やし、一一五番の対応をよりきめ細かくします。

 十二月下旬、仏北部を襲ったこのレベルの寒波では、パリ地域圏だけで常時開放の二万四千八百床に、二千二百床が付け加えられました。

 夜間気温が氷点下一〇度以下となる「極寒」が第三レベルで、必要に応じ宿泊施設を確保するために強制措置がとられます。

 対応策を発表したネリー・オラン社会的排除阻止・社会参入推進担当相は、この緊急措置で「すべてのホームレスに宿を提供する」と胸を張りました。もちろん問題がないわけではありません。

必要なのは社会復帰対策

 実際に厳寒期ともなると、一一五番は常に通話中であったり、緊急電話対応チームが臨時職員で不慣れなために不手際が目立つこともしばしば。犬などのペットと生活するホームレスや難民申請を拒否された不法滞在のホームレスもおり、施設側が規則をたてに宿泊を拒否するケースもあるといいます。

 実際に夜間の見回り、現場への急行、ホームレスへの説得、医療や食事、宿泊などの具体的な手配を実際におこなっているのはカトリック救済会や国境なき医師団などの社会・市民団体です。その連合体「社会的参入・受け入れ協会全国連合(FNARS)」の社会的救急・監視部門の責任者シルビー・ルーデンさんは「路上生活者の必要性に応える宿泊施設として機能していない」と問題点を指摘しています。

 社会的に排除される人をなくそうと生み出された施設が排除の論理で運営されるという逆説は、問題の複雑さを物語っています。

 またこうした対応がいわば対症療法にとどまっていたのでは真の解決にならないことも確かです。

 「気温を基準とした緊急特別措置では路上生活者の真の救済にはつながりません。気温が元に戻ればホームレスは再び路上生活に放り出されてしまい、気温の変化でまたその人が戻ってくるという繰り返しになるだけです。必要なのは彼らの社会復帰対策です」

 (パリ在住・福間健三)



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