2005年1月6日(木)「しんぶん赤旗」

自由にもの言える職場に

勝利和解した石川島播磨の労働者

差別根絶へ決意新た


 四十年もの長期にわたった日本共産党員やその支持者への差別をやめさせたいと裁判に訴えて昨春、勝利和解した総合重機大手の石川島播磨重工業(本社・東京)でたたかってきた労働者たち。「今年こそ、思想差別とともに職場のあらゆる差別をなくそう」と意欲をみなぎらせています。 原田浩一朗記者


愛知

写真

石播愛知工場の前に立つ「石播愛知人権回復を求める会」の人たち=愛知県知多市

 伊勢湾に面した愛知県知多市の臨海工場地帯の一角にある石播愛知工場前。「石播は和解条項に従い、賃金・資格差別をやめよ」「職場に働くルールの確立を!」と書いた紫と黄色の真新しいのぼりが風に翻ります。

 勢ぞろいしたのは「石播愛知人権回復を求める会」(十七人)のメンバーです。作業服の上山辰男さん(57)が「二〇〇五年は自由にものがいえる職場にしたい」と声をあげると、「よーし」の唱和がこだましました。

 石播は、日本共産党員や支持者とみなした労働者を徹底して排除しました。共産党員を撲滅するという目的で「ZC(ゼロ・コミュニスト)計画管理名簿」を極秘裏に作成し、差別してきました。名簿に載ると、どんなに優れた技能をもっていても仕事をとりあげられ、十年以上も“隔離部屋”に押し込められました。忘年会や冠婚葬祭にも呼ばれません。

 「あの屈辱に、いまも体が震えます」。昨年末に石播を定年退職した吉田波江さん(60)は一九八六年十二月、設計管理の事務職の仕事から、窓ふきを命じられました。

 百万トン級のタンカーを建造できるドックを横目に、“伊吹おろし”が吹きすさぶなか、構内の草むしりをさせられた労働者も。「真っ黒に日焼けしたベテラン溶接工が『もう耐えられん』とボロボロ涙を流し、会社を辞めていった」と田島隆一さん(55)は憤ります。

 これらは、労働条件の改善をめざして活動している日本共産党員への差別をテコに労働者支配を強め、無法なリストラをすすめるのが石播のねらいでした。八六年十一月から一カ月半で、三人に一人にあたる七千人が職場を追われました。

 石播はその後もリストラを繰り返し、二千人を超える労働者がいた愛知工場は、いまでは六百人に激減しています。

 安易な人減らしは、技術力を疲弊させ、職場の士気を低下させました。

 労働者の粘り強いたたかいで、石播は「会社及び従業員がやってはならない差別の事例」十四項目の覚書を原告団と交わしました。

 これを誠実に実行させて、差別のない、働きがいのある職場づくりはこれからです。昨秋には、「人権回復を求める石播連絡会」が発足。百五十五人(OBを含む)が各地で運動しています。

 「愛知の会」は「一切の差別をなくし、職場に自由を回復してこそ、石播の再生はできる」と決意を新たにしています。


石播原告団と会社が取り交わした覚書

「やってはならない差別の事例」14項目

 (1)女性であることを理由に、補助的な業務を続けさせ、資格や賃金を低く抑える。

 (2)思想、支持政党、労働組合活動、およびインフォーマル(秘密労務)組織の活動への協力度を理由に、仕事(業務従事資格の付与を含む)、資格、賃金などで格差をつける。

 (3)合理的な理由がなく、本人の意思に反して、仕事を取り上げる、極端に少なくする、席や執務場所を隔離する。

 (4)仕事上のミスや行き違いを口実に、みなの前で大声で非難・罵倒(ばとう)する、始末書や反省文を要求する、つるしあげる、社内規定にない私的制裁を加えるなどで、精神的または肉体的に苦痛を与える。

 (5)合理的な理由がなく、仕事や安全衛生などの教育・研修、または社内公開講座などを受けさせない。またこれらの開催や募集を知らせない。

 (6)合理的な理由がなく、会社の福利厚生制度の利用を制限または拒否する。

 (7)会社行事、職場行事および日常の職場の交友において、特定の従業員を無視、嫌がらせ、排除を行う。またはこれを働きかける。

 (8)合理的な理由がなく、会社体育文化会所属サークルへの入会を拒否する、退会を求める。

 (9)「話をすると同じに見られるから損だよ」などの忠告・助言という形であっても、結果的に特定の従業員とのあいさつ・対話・交友を、監視・制限・妨害する。

 (10)香典、祝い金、餞別(せんべつ)などを集めない、知らせないなどで、特定の従業員を職場内の冠婚葬祭から排除する。

 (11)就業時間中にインフォーマル組織の活動や会議を行う。またはこのために施設使用や外出などの便宜をはかる。

 (12)特定の従業員が配布するビラなどを受け取らないように働きかける。

 (13)新入社員教育などで、労働組合活動に関し特定の従業員や団体を非難し、またはビラなどの受け取り拒否などの非協力を教唆(きょうさ)する。

 (14)思想、支持政党、労働組合活動の傾向、インフォーマル組織の活動への協力度、居住地での活動、家族の活動、および私病歴などを調査する。またこれらをリスク・マネジメント(危険の管理・制御)の対象にする。またこれらを目的にした教育を行う。


 石播争議 差別の是正を求めて、東京・田無、瑞穂工場に所属する武蔵地区の労働者八人が二〇〇〇年三月に東京地裁に提訴。「ZC計画管理名簿」が発覚し、社会的に追い詰められた石播は〇四年三月、原告と和解しました。石播は名簿の存在を認め、謝罪。賃金差別の是正や再発防止策を確約。「原告以外からの差別是正の訴えに対しても、和解の精神を踏まえて誠実に協議する」とのべました。



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