2004年12月28日(火)「しんぶん赤旗」

ウクライナ

ユーシェンコ氏勝利宣言

大統領選やり直し投票


 【キエフ=田川実】ウクライナ大統領選のやり直し決選投票が二十六日行われ、野党「われらのウクライナ」代表、ユーシェンコ元首相が当選を確実にしました。十一月二十一日の選挙直後、与党候補ヤヌコビッチ首相陣営の不正に、野党支持者、国民が抗議に立ち上がり、最高裁が命じた再投票。ユーシェンコ氏は「国民の勝利。われわれは自由になった」と宣言しました。

 中央選管によると、開票率98・36%の段階で、ユーシェンコ氏が52・32%、ヤヌコビッチ氏が43・89%の得票です。十一月には、ヤヌコビッチ氏約49%、ユーシェンコ氏46%で、ヤヌコビッチ氏の当選と発表されていました。投票率は十一月を少し下回る77・22%。

 選挙では各国から監視員一万三千人近くが活動。欧米の代表らが「正常な選挙」と評価する一方で、旧ソ連各国でつくる独立国家共同体の代表は、有権者名簿の不備や運動期間後の宣伝などを指摘するなど、双方の立場が前回と逆になりました。

 二十六日夜、記者会見したヤヌコビッチ氏は、不正事実が特定できれば裁判に訴えるとする一方、「負けが判明すれば強力な野党として活動する」と、事実上の敗北宣言を行いました。

 選挙は、新興財閥の政治関与の是正や経済の再建、ロシア、欧米との関係のあり方が問われましたが、両候補は「イラクからのウクライナ軍撤退」も公約に掲げました。


財閥癒着断つことが課題

 解説 ウクライナ大統領選のやり直し決選投票で当選を確実にしたユーシェンコ氏の課題は、一九九〇年代初めのソ連崩壊と国の独立後、民営化の流れの中でのし上がった新興財閥と政権との癒着を断つことです。

 十年続いたクチマ現政権は、キエフ・マフィアと呼ばれる中央部の新興財閥、さらにヤヌコビッチ首相の出身地、東部のドネツク・マフィアに支えられているといわれます。不正選挙への抗議とユーシェンコ勝利は、旧国営・現民間大企業と行政の機構をフルに使った支配に対する国民のノーの声でした。同氏自身、政権に入っていない新興財閥の支援を受けています。

 二十七日未明、ユーシェンコ氏は集会で、「独立した政治家による円卓会議を開く」と述べ、組閣作業の開始を宣言しました。同氏の公約である、財閥をはじめ脱税企業からの徴税、雇用の大規模創出、給与・年金の引き上げなどをどう実現するか。新政権の顔ぶれが注目されています。

 また選挙をきっかけに先鋭化した西、中央部と東、南部の対立の克服も急務です。再投票でユーシェンコ氏が大幅に票を伸ばしたとはいえ、東、南部がヤヌコビッチ首相支持という構図は変わっていません。

 炭鉱の州ドネツクをはじめ東部の重工業労働者は、ここ数年で給与、年金の遅配がなくなり、額も上がったことから、首相を強く支持しています。かつて炭鉱の閉鎖、外国からの輸入を公言したこともあるユーシェンコ氏は「敵」です。

 同氏の欧州連合への早期加盟方針も、厳しい競争にさらされ職場、生活を悪化させると受け止められていました。国の経済の七―八割を占める東部、その住民の支持を得ることは、政権の安定に不可欠。ユーシェンコ氏は大統領就任後、東部を最初に訪れると述べています。

 またウクライナにはロシア系住民も多く、ユーシェンコ氏は、経済的結びつきも強い隣国ロシアを、初外遊先にする意向です。

 (キエフ=田川実)



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