日本共産党

2004年12月26日(日)「しんぶん赤旗」

「特殊機関」が真相究明の大きな障害

日本政府と北朝鮮側のやりとりから


 安否不明の日本人拉致被害者について、日本政府は二十四日、北朝鮮側提出資料の精査結果を公表、同日これとは別に、拉致被害者の家族にたいして、日朝実務者協議での北朝鮮側とのやりとりの詳細を示した文書も、家族が公表しています。そこからは、「『特殊機関』の存在が真相究明の大きな障害になっている」とした政府の精査結果の「結論」の指摘が浮かび上がっています。

 拉致被害者の家族に提示された資料から、「特殊機関」にかかわる日本政府と北朝鮮側の主なやりとりの部分を抜粋して紹介します。


「特殊機関の秘密は答えられない」「妄動分子が焼却した」

横田めぐみさん関係

(調査委員会からの聞き取り)

  一九七七年から一九八一年春まで生活した招待所の場所と名前は。

  特殊機関の秘密となっており、答えられない。日本の特殊機関もアジトの場所をもらすことはないと思う。

  (平壌の)49号予防院において作成された「臨時カルテ」の性格は。現在は保存されていないのか。

  入院当時、臨時カルテだけを作って治療するよう当該機関(特殊機関)が頼んだ。その所在については、探してみたが、妄動分子が焼却していることが確認された。

  (めぐみさん拉致)実行犯への処分を証明する文書を入手したい。

  命令なく連れてきたことから、当該工作員は職務停止処分を受けた。これを証明する書類は見つからなかった。当該工作員は、その後職場復帰したが、二〇〇〇年十一月に脳出血で死亡した。

  (九四年三月の入院で、当初、義州の病院が予定されていたが、平壌の49号予防院に急きょ変更されたのは)どの時点で変更になったのか。

  入院する前日の夕方、当該機関(特殊機関)の幹部の協議で49号予防院に送るべきではないかとの意見があり、…方向を変えた。

  検視した写真はないのか。

  「死亡」後、特殊機関が臨時カルテ、死亡記録をもっていき、全て焼却処分した。

 【解説】 横田めぐみさんが拉致直後に収容された「招待所」の所在地すら、「特殊機関の秘密」を理由に回答しないなど、もっとも基本的な事実の解明も困難な状況が示されています。

 めぐみさんが「死亡」したとされる病院でのカルテ、死亡記録もすべて「特殊機関」が持ち去り、「妄動分子」によって焼却されたというのが北朝鮮側の説明です。

「特殊機関に直接確認」というが

田口八重子さん関係

(調査委員会からの聞き取り)

写真
公開資料に添付された北朝鮮側の文書(交通事故の現場検証調書類)

  (田口さんが亡くなった)病院の所在地はどこか。墓地の流出を証明する文書はあるのか。

  病院は特殊機関に属するため、所在地は明らかにできない。墓地の所在地や流出を証明する文書はない。

  田口さんは、八三年から八六年まで横田めぐみさんと忠龍里(チュンリョンリ)招待所で生活しており、八四年十月に婚姻したという事実はなかったとの情報があるが、結婚の日付をどうやって確認したのか。

  特殊機関に(結婚の事実を)確認した。

  田口さんの朝鮮名は「コ・ヘオク」以外にもあるのではないか。我が方の調査では、金賢姫に日本語を教えた「李恩恵(リ・ウネ)」は田口さんであることが判明している。

  田口さんは共和国に入国して以来、コ・ヘオクとの朝鮮名で通してきており、他の朝鮮名はなかった。リ・ウネと呼ばれたことはない。…我々は特殊機関に入って直接確認した。

  特殊機関内ではいくつもの名前を持つと聞いているが、田口さんは一つだけだったのか。

  確かに特殊機関では、何回も名前を変えたり、いくつかの仮名を使っているが、日本人拉致被害者の場合は、制限区域に居住しているので、いくつもの名前を持つ必要はない。

  それは誰からきいたのか。

  調査委員会の人間が、特殊機関内に入って、関係者から話を聞いた。

 (田口さんが居住していた麟山=リンサン=郡招待所元接待員の女性から聞き取り)

  (田口さんが「死亡」したとされる事故の後)田口さんがどうなったか聞いたか。

  数日たたないうちに、当該機関(特殊機関)の関係者が十人ぐらい来て、「事故で死亡した」と言った。

  所持品はなかったか。

  接待員が触ることはできないので、当該機関の関係者が処理したと思う。

 【解説】 今回の北朝鮮側との交渉では、今年五月の日朝首脳会談で、金正日国防委員長が、安否不明の十人の消息について「白紙からの再調査」を約束し、それを受けて北朝鮮国内に設置された「調査委員会」がどこまで事件の真相に迫れているのかが問われました。事実解明にとって、「特殊機関」に切り込む調査が不可欠であることがはっきりしていたからです。

 調査委員会側は、しばしば、「特殊機関内に入って、調査した」としていますが、そこから出てきた説明には無理が多く、物証はきわめて乏しいものでしかありません。

 「リ・ウネ」は、大韓航空機爆破の実行犯・金賢姫の日本人化教育に携わったとされる人物で、日本の警察は、田口さんと同一人物としています。

拉致実行犯の特殊機関員、英雄視も「内部の問題」

原敕晁(ただあき)さん関係

(調査委員会からの聞き取り)

  入院していた病院の所在地はどこか。

  特殊機関の機密に関わることなので、所在地は言えない。

  (原さん拉致実行犯の)辛光洙(シン・グァンス=警視庁が国際手配中)の人定事項、活動状況、所属など。辛を処罰せずに英雄扱いしているのはなぜか。

  当時の所属機関と関与組織等については特殊機関の機密に属する。原さんの拉致は、辛との利害関係の一致により自発的にきたものである。…我々が辛を優遇しているのは我が国内部の問題である。

  拉致の状況は、辛光洙自身から聴取したのか。

  辛からも直接聞いたとの報告を受けた。

 【解説】 辛光洙は韓国潜入中の八五年、国家保安法違反(スパイ活動)で逮捕され、韓国で確定した判決には、原さん拉致の事実が詳しく記されています。日本の警察も捜査をすすめ、旅券法違反容疑で国際手配しています。

 辛は北朝鮮帰国後、「統一愛国闘士の非転向長期囚」(朝鮮通信)などと英雄扱いされており、日本側がこの点をただしたものです。



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