日本共産党

2004年12月21日(火)「しんぶん赤旗」

核戦力は法と倫理に反する

ブッシュ政権に批判 米で核兵器のシンポ

マクナマラ元国防長官らも指摘


 「米国の核戦力・核戦争計画は倫理にも法にも反する。軍事的に不要なだけでなく、きわめて危険。不拡散体制にとっても破壊的だ」。一九六〇年代に米国防長官を務めたロバート・マクナマラ氏(88)は、開口一番こう力説しました。専門家や議会関係者らによる核兵器に関するシンポジウムが相次いでワシントンで開かれ、二期目を迎えるブッシュ政権の核政策の危険性が改めて浮き彫りになりました。(ワシントン=浜谷浩司 写真も)


戦略核1万発

写真
「核安全保障の道」シンポジウムで討論する(右から)マクナマラ、コーブの各氏=16日、ワシントン市内

 「米国進歩センター」と「第四自由フォーラム」共催の「核安全保障への道」と題した十六日の会議は戦略核兵器を中心に議論が行われました。「米国進歩センター」のラリー・コーブ上級研究員は米核政策がほとんど理解されていないとし、米議会は核戦争シナリオ「単一統合作戦計画(SIOP)」の中身も分からないまま、戦略核に毎年約七十億ドル(約七千四百億円)の予算を承認していると指摘しました。

 米国は広島型の二十倍の爆発力をもつ戦略核一万発を保有。ロシアに向けられた二千発を十五分以内に発射できるうえ、地上配備ミサイルの標的は五百から八百に増えているとし、ロシアとの戦略核削減条約も「兵器を警戒体制から外すだけで、なくすものではない」と述べました。

先制使用の危険

 また、米国は核を最初に使う先制使用政策を放棄したことがなく、ブッシュ政権が小型核の開発を進めることは先制使用の危険をいっそう高めると警告しました。

 マクナマラ氏は、二千発の緊急発射態勢の解除は「難しくない」としてただちに実施するよう提案。さらに、米議会や北大西洋条約機構(NATO)が、核問題を真剣に議論することがきわめて重要だと述べました。

 同氏は、核政策にかかわってきた約四十五年間に「核の使用が米国の利益になることを示すものは、紙切れ一枚見たことがない」と、核兵器は不要だとの考えを示したうえで、それにもかかわらず「膨大なリスクを抱えている」と強調。

 同氏やロカール元フランス首相ら世界の政治家・軍人らが参加した九六年のキャンベラ委員会報告が、核兵器の廃絶は可能だと呼びかけていることを強く指摘しました。

 会場からは、戦略核を実質的に削減する新たな条約の必要が提起されました。マクナマラ氏はそれに賛意を示しながらも、核不拡散条約(NPT)第六条と再検討会議最終文書によって、核保有国は「核兵器廃絶に向けて真剣に交渉することになっている」と指摘。米国が批准国として同条約に従うことが「出発点でなければならない」と述べました。

新型核を推進

 この前日には、「軍備管理協会」と「第十回年次国際核物質政策フォーラム」共催の新型核兵器開発に関する会議が開かれ、開発を推進する政府側から国家核安全保障局のハーベイ政策部長が出席しました。

 同氏は、(1)政府が求めているのは研究であり、新型核開発を推進したものでない(2)核兵器近代化の作業なしに設計能力は維持できず、今後の核兵器の安全性や信頼性に影響する(3)世界での核兵器の拡散は米国の核近代化政策に刺激されたものでない(4)戦略核削減条約のように米国の核政策はNPTに完全に合致している―などと主張しました。

 一方、会議には二人の米議会スタッフもパネリストとして参加。バーニソン氏は、二〇〇五年度予算から新型核関連予算を削除した下院歳出委小委(ホブソン小委員長=共和党)に所属。リーバーマン氏は九四年に制定された小型核開発禁止措置(スプラット・ファース修正条項)を推進したスプラット下院議員(民主党)のスタッフです。同措置は昨年、撤廃されました。

きわめて好戦的

 バーニソン氏はホブソン小委員長の発言を引きながら、新型核の提案は「きわめて挑発的で好戦的だ」と述べました。ブッシュ政権が二〇〇一年末に議会に提出した「核態勢見直し(NPR)」は、核兵器の重要性だけでなく「新たな能力の重要性」を強調していると指摘。世界最強の軍事大国である米国が核兵器を重視しているのに、他国に核を持つべきでないと主張することはできないと語りました。

 また、実際の予算措置が重要だとして、新型核関連予算は後半の年度に膨張することになっている点を指摘。「予算に示された政策転換こそ、小委員長が、そして下院全体が支持しなかったものだ」と述べました。

 リーバーマン氏も、新型核兵器の開発は、核兵器がテロリストなどの手に入らないようにという目標に「まったく反する」もので、世界を「米国にとってより危険にする」と強調しました。

 さらに、新型核の一つである強化核地中貫通弾(RNEP)について、地下施設を現実に破壊するには、広島型の十倍以上の爆発力が必要であり、死の灰を広範にまきちらすと指摘。「仮にイラクで地下九百フィート(約二百七十メートル)以内で爆発させた場合、死の灰はイラク全土に散る」と述べました。

 同氏もNPT第六条の誓約に言及し、新型核の開発はこの誓約に「真っ向から反する」と批判しました。


 キャンベラ委員会 一九九五年十一月、オーストラリアのキーティング首相(当時=労働党)が「核兵器のない世界への具体的な措置」を提案するために設置した独立委員会。九六年に発足した保守連合(自由党・国民党)政権に引き継がれました。委員には、ノーベル平和賞を受賞した「パグウォッシュ会議」の創設者の一人、ロートブラット氏(英国)、米国のマクナマラ元国防長官、今井隆吉元ジュネーブ軍縮代表部大使ら十七人が参加。

 NPT第六条 核不拡散条約(NPT)の第六条は、締約国に対し、誠実に核軍縮交渉を行うよう約束することを規定しています。米国など核保有国は核兵器の廃絶はあくまで「究極目標」だと主張し、第六条の約束に背を向けてきました。二〇〇〇年五月のNPT再検討会議は、「究極的核廃絶」の代わりに「完全核廃絶の明確な約束」を明記した最終文書を採択、核保有国の義務を明確にしました。これは、すみやかな核兵器廃絶以外に代案はないとの国際世論の高まりを反映したものです。



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