日本共産党

2004年12月21日(火)「しんぶん赤旗」

NHK不正事件 特集番組で見えたもの

目立つ管理主義的発想

公共放送として視聴者第一の改革を


 「NHKの信頼が大きく揺らいでいます」とのナレーションで始まった特集番組「NHKに言いたい」。一連の不正事件にたいして、電話、ファクスで視聴者の声を聞き、六人の識者と海老沢勝二会長が、NHKのあり方を議論しました。この中で改革の道筋が見え、国民は納得できたでしょうか。

 冒頭、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏は「ガス抜きという形で終わることにならないのか」と番組の性格を問いました。海老沢会長は「寄せられた声は今後の改革に生かしていきたい」と答えました。視聴者からの声は二万七千余件、異例の関心の高さです。テロップで流された意見は「会長辞任を求める」という厳しい意見が多かった一方、「NHKならではの、いい番組を作ってほしい」という期待もありました。

 それらに対し、会長の答えは「職員の倫理観を高め、法令を順守し、チェック機能を高める」というものでした。鳥越氏が言うように「精神論ばかりで改革の具体策が見えてこない」のです。

問われる経営委

 問題点も噴出しました。九月九日、国会でのNHK問題参考人質疑を生中継しなかった問題は海老沢会長の独断であったことが明らかになりました。NHKの「最高意思決定機関」である経営委員会は何もかかわっていませんでした。経営委員として出席した堀部政男中央大学教授は「月に二回、二時間の会議で、議決事項がかなりあって、それに時間をとられている」とのべました。本来なら不正事件にかかわる問題として最優先課題であるはずなのに、議論もされていなかったことが浮き彫りになりました。

 また経営委員会には独立の事務局がないことも強調されました。NHKの大問題にほとんど関与できない経営委員会とは何なのか。

受信料の意味

 NHKは国営放送ではありません。視聴者の受信料で成り立っている公共放送です。受信料は時の権力からも、大企業からも自由であり、国民のための放送局であることの担保です。しかし、受信料未払いが、十一月末現在で十一万三千件に達しています。公共放送の危機といっていい。鳥越氏は「不払いが増えていることに乗じて政界に牛耳られることにならないか」と懸念を表明しました。

 これまで、NHKトップは、予算や経営委員の任命権(総理大臣)などを通じ、政府・与党にばかり顔を向けて来たのではないか。視聴者の声をどれだけ聞いてきたのか。上ばかり見る体質が今回の不正事件の背景にあるのではないでしょうか。

職員の声聞かず

 「NHKの制作現場がおかしいと言う声を聞く、かつては番組制作者の顔が見えた。しかし今、管理主義の中、制作者が駒になっているのではないか。いいものを作ろうという緊張のなかでは、制作費を不正するなんてことはありえない」。制作会社テレビマンユニオンの今野勉氏が言いました。視聴者と同時に、職員の声を聞き風通しのよい組織に改革することを求めたのです。

 しかし今回の番組には職員の声は取り上げられませんでした。会長が強調したのは「指導、教育、誓約書の提出」という管理強化の言葉だけでした。事実、辞任を求める日放労(日本放送労働組合)や、受信料を集金するスタッフが組織する全受労(全日本放送受信料労働組合)との話し合いは拒否しています。改革の方向が逆、と言わざるをえません。

 全体として、会長の話は、NHKも被害者とするこれまでの見解を一歩も出るものではありませんでした。また「NHKは八十年来、国民のために尽くす信頼関係で成り立ってきました」とも言いました。今年は放送八十年ですが、戦前の二十年間、NHKは政府のもとで、軍部のための放送で、国民を戦争へと動員してきました。戦後と戦前をいっしょくたにする感覚こそが問題なのです。NHKはいま、真に視聴者に向いた公共放送としてのあり方そのものを問われているのです。 荻野谷正博記者



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