2004年12月20日(月)「しんぶん赤旗」
憲法否定の言動をくり返す石原慎太郎都知事のもとで、全国最悪の福祉切り捨てを進め、「都市再生」の名で大型開発に湯水のごとく財政をつぎこむ東京都政。知事の暴走をチェックする役割が求められる都議会はいま、どうなっているのか──。中村圭吾記者
|
十六日閉会した十二月都議会での知事と自民党とのやりとりは、戦時中に逆戻りしたかと思わせるものでした。
石原知事が一日の所信表明で、朝鮮半島をめぐって日本とロシアが支配権を争った日露戦争を賛美すると、自民党は代表質問(八日)で、アジア・太平洋地域を侵略した太平洋戦争を「大東亜戦争」と呼んで正当化。十六日の本会議でも「やむをえず、自衛のために米英連合軍とたたかった」と戦前の軍部などの論理そのままに、侵略戦争美化を重ねました。
こういう侵略戦争賛美、憲法否定の政治を正面からただしているのは、日本共産党だけです。
日本共産党のそねはじめ都議(北区選出)は八日、憲法否定の発言をくり返す石原知事の立場は、憲法九条改悪を押しつけるアメリカの立場と同じで「日本を再び『戦争をする国』にしようとするものだ」と批判。知事に発言の撤回と憲法順守義務の履行を求めました。
石原知事は、質問にまともに答えず、「憲法を順守するかしないか、場合によったらしません」「命がけで憲法を破るんだ」「九条は改正の余地がある、改正すべきだ」と声を張り上げました。
この知事発言を、自民党は「感動を持って聞かせていただいた。政治に携わるものの一人として、心を奮い立たせられた」(九日、本会議)と礼賛しました。石原知事と歩調をそろえ、憲法を否定する立場を公然と表明したのです。
憲法否定の都政への持ちこみの最たるものが、都立高校への「日の丸・君が代」強制です。この問題では、自民党とともに民主党が突出した役割を果たしています。
同党の土屋敬之都議(板橋区選出)は、「国歌斉唱時に起立もしない教職員がいまだに存在する」「式典運営指針などを制定すべき」(二〇〇三年七月二日、本会議)だと要求。その三カ月後の昨年十月、「日の丸・君が代」を強制する東京都教育委員会の通達が出されました。
同都議はまた、「君が代」斉唱時に起立しない生徒が相次いだことに対し「現職教員のなかに協力者がいるのではないか」とし、かかわった教員を処分するよう求めました。(〇四年三月十六日、予算特別委員会)
「日の丸」「君が代」を強制できないことは政府自身も認めています。民主党都議の態度はそれさえ否定するものです。
|
東京の福祉はいま、「冬の時代」です。自民党、公明党、民主党、生活者ネットの「オール与党」が福祉切り捨ての予算・決算に賛成し続けてきたからです。(別項参照)
お年寄りのためのシルバーパスの全面有料化、マル福(老人医療費助成)・老人福祉手当廃止、特別養護老人ホームや保育園への人件費補助など補助金の大幅カット、百を超える都立施設の廃止・民間移譲など広範囲に及びます。
福祉関係予算を大幅に削ったうえ、それさえも一部を使い残したため、福祉関係費は一九九九年からの四年間で七百六十四億円もの削減(決算)。「充実する」と約束した基盤整備も大きく立ち遅れ、介護老人保健施設の整備率は全国最下位です。
福祉切り捨ての一方で石原都政は「都市再生」の名で、超巨大ビル建設を応援し大型幹線道路計画に熱中。東京の環境や都の財政を悪化させています。この「都市再生」も「オール与党」が一体となってすすめているのです。(別項参照)
知事自身が「共産党だけが反対で、あとは自民党も公明党も民主党も、生活者ネットのおばさんたちも、これはみんな同じことでやっている」(〇三年三月、都知事選で)と「オール与党」の翼賛ぶりを誇っています。
国政では自民党との“対立”を演出している民主党も、都政では「(自民、公明と)政策的に大きな乖離(かいり)はない」(名取憲彦幹事長、「都議会情報」紙八月二十七日付)といいます。
こうした都議会の状況について都政専門紙は「知事と議会がベッタリで、チェック機能が十分働いていないように感じる場面が少なくない」(都政新報八月二十七日付)と憂いています。
日本共産党はこの悪政を批判し、その転換を求めています。それだけでなく、住民の運動と結んで八王子、清瀬などの小児病院の廃止計画を延期させ、私学への二分の一助成制度を守り抜き、子どもの医療費無料化の拡充など数かずの実績をあげています。
十二月都議会では、三宅島民の来年二月の帰島にあたり、都独自に一人当たり最大百五十万円を上乗せする住宅再建支援が決まりました。東京都は当初、石原知事が記者会見で「全面的に助けろといわれても、財政的に難しい」(九月三日)と述べるなど、冷たい態度をとっていました。
こうしたなかで、二〇〇〇年九月の全島避難の直後から、島民と力をあわせ、住宅再建への公的支援策を一貫して求めてきた日本共産党の活動が実を結んだのです。
都議会本会議を初めて傍聴した北区の石山義益さん(66)はいいます。
「共産党以外はなれあっているからか、共産党の質問のときはヤジで騒然。知事の横暴ぶりは聞きしに勝る。都民の要求にかなった立場で質問するのは共産党だけ。来年の都議選でなんとしても共産党を勝たせなければとひしひしと感じた」
| オール与党の福祉切り捨て語録 |
自民党 都民施策を大幅に削減する「第2次財政再建推進プラン」について、「わが党の主張と合致し、同じ方向をめざすもの」と賛成(2003年10月17日)
公明党 福祉切り捨ての「改革プラン」について、「福祉切り捨て批判というものはまったく的外れ」(2000年3月15日)、「わが党の提案を都は全面的に受け入れた」(01年2月27日)と評価
民主党 「福祉分野での構造改革を評価」(02年2月26日)し、障害者医療費助成の切り下げに反対する意見を「時代に則した福祉改革の足を引っ張る何の益もない、ためにするもの」(02年9月30日)と攻撃
生活者ネット 福祉切り捨て、都立施設の廃止・民間移譲などを進めるプランについて「おおよそ適当なものであると考える」と容認(03年12月9日)
| 環境破壊、都財政圧迫の「都市再生」 |
自民党 破たんした臨海副都心開発を「昭和の時代から都の総力を挙げて進めてきた東京再生の切り札というビッグプロジェクト」と推進(02年2月26日)。環境アセスメント制度の改悪を「高く評価」と賛成(02年6月18日)
公明党 環境アセス改悪を「スピーディーな都市再生をはかるため、アセス手法の一部を合理化したことも理解します」と容認(02年6月18日)
民主党 「民間の動向を後押しし、東京再生を着実に進めるためにも、規制緩和などの制度的改革とともに、都債も最大限活用し、かつ財源の優先的配分を行い、必要な事業を進めるべき」と「都市再生」を推進(02年9月25日)
東京都議会の構成 定数百二十七。欠員八で現員百十九。各党の内訳 自民党五十一、都議会民主党二十一、公明党二十一、日本共産党十五、生活者ネット六、無所属五。