日本共産党

2004年12月18日(土)「しんぶん赤旗」

西武鉄道の上場廃止

揺らぐ 市場の信頼

虚偽記載、1カ月で20社超える


 東京証券取引所は十七日、一部上場の西武鉄道(埼玉県所沢市)の上場を廃止しました。破たんしていない企業の上場廃止は極めて異例です。


グラフ

 「裏切られた。株式市場に対する信頼が揺らぎ、国民からの風当たりの強さを感じる」ともらすのは、証券最大手の野村証券のある幹部社員です。

 東証は十一月十六日の上場廃止決定に際し、(1)虚偽記載の重大さ(2)公益と投資者の保護―の二点を理由にあげました。具体的には、親会社であるコクド(東京都渋谷区)が長年にわたり株の名義を第三者に分散し、保有株式を実際より少なく見せ掛けていたことが悪質だと指摘しています。

 今年三月期の報告では上位十株主の持ち株比率は63・68%だったのに、実は88・57%でした。多く見積もっても一割程度の株式しか流通していなかったことになります。東証上場部の担当者は次のように説明します。

 「上位十株主が上場株式数の80%超を一年以上保有していた場合、上場廃止基準に相当する。一部株主の独占を排除し、株式の需給関係や流動性を確保するための基準だ。ところが西武は違反の事実を組織的にずっと隠してきたわけで、上場廃止は当然の措置だ」

手探り“売買”

 上場廃止は何を意味するのでしょうか。野村の幹部社員は続けます。

 「企業にとっては市場を通じて資金を調達する手段がなくなり、銀行借り入れなどに頼らなければならなくなる。投資家も“手探り”の売買を強いられることになる」

 ある市場関係者は「上場廃止により、企業は財務諸表だけでは示せない社会的評価の手段を失う」ともいいます。

 政界とも深い結び付きを持ち、ワンマン経営で有名な堤義明・元コクド会長が会長を兼任してきた西武鉄道では、総会屋への利益供与事件にからんで三月、専務らが逮捕されました。その関連で株主の虚偽記載が発覚することを恐れたコクドは、持ち株比率を下げるため八月中ごろからサントリーなど七十二社に株式を売却。ところが十月、虚偽記載が白日の下にさらされ、株価は一時、大きく下落しました。

 証券取引等監視委員会は、コクドと各社との株売買についてインサイダー(内部者)取引の疑いがあるとして調査を始めています。西武側は各社との売買契約を解除して乗り切る方針ですが、株価下落で損失を被った一般投資家からは、損害賠償請求訴訟を提起する動きもあります。

開示義務ない

 もともと、財務情報の開示義務がない非公開企業であるコクドが、公共交通機関の西武鉄道やプロ野球・西武ライオンズを実質支配していたことが問題です。

 東証によると、十月末時点で二千二百社以上の上場企業のうち、親会社がコクドと同じく非公開企業になっているのは十七社。株主名簿処理の透明性維持にとって不可欠な、株式事務代行会社への委託をしていない企業は西武を含め三社です。

 こうした事実から「西武は特殊」といわれるものの、株主情報の過少記載の新規訂正は、最近一カ月だけでも二十社を超えます。上場企業の開示情報に対する信頼が失われつつあります。

 経済評論家の奥村宏さんは指摘します。

 「株式の半分以上を法人が所有し、いまだに“取引上の付き合い”による企業間の株式持ち合いが残る日本は特異な存在だ。独占禁止法違反の疑いもある。こういう状態では、日本の株式市場は“公正な株価”を決められないと思う」

 北條伸矢記者



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