日本共産党

2004年12月17日(金)「しんぶん赤旗」

主張

授業料値上げ

大学への進学機会を奪うのか


 政府は、来年度予算の編成で、国立大学授業料の標準額(現行五十二万八百円)を引き上げ、私立大学経常費への国庫助成を削減しようとしています。

 国立大学長でつくる国立大学協会は八日、「学生納付金の値上げは容認できない」とする要望を政府に提出しました。全日本学生自治会総連合(全学連)がとりくむ「学費値上げストップ、大学予算増額」を求める請願署名に賛同がひろがるなど、大学関係者から批判の声があがっています。

欧米と比べ異常な高さ

 世界でも異常に高い学費のさらなる値上げは、国民の生活をいっそう圧迫し、大学や大学院への進学機会を奪うものです。

 国立大学の授業料は、今年四月からの法人化によって、国が定める標準額の10%増を上限に各大学で決めることになりました。その際、「経済状況によって学生の進学機会を奪うこととならないよう、将来にわたって適正な金額、水準を維持する」(国会付帯決議)とされています。

 ところが財務省は、法人化前に隔年で授業料を上げてきたことを理由に、標準額を引き上げるといいます。国が国立大学法人に交付する予算は、授業料の引き上げを前提に算定されるため、財源確保を理由に多くの大学で値上げが危ぐされます。

 私立大学への国庫助成も、財務省は「学生数が減少しているから予算縮減をはかる」としています。しかし、私大助成は、国会の付帯決議(一九七五年)で経常費の「二分の一とするよう努める」とされているのに、逆に12%にまで減らされてきたのが実態です。国庫助成をさらに削減すれば、私大の経営に深刻な影響をあたえ、多くの大学で学費値上げを引き起こしかねません。

 高すぎる学費は、もはや家計負担の限界にきています。初年度納付金(入学料、授業料)は、国立大学で約八十万円、私立大学で約百三十万円です。一方で家計収入は、六年連続で下がり、九七年と比べて一割以上も減っています。

 文部科学省の中央教育審議会でさえ、これ以上家計に負担をかければ「高等教育を受ける機会を断念する場合が生じ、実質的に学習機会が保障されない恐れがある」と指摘しているほどです。

 憲法第二六条が保障する教育の機会均等を損なうほどの高学費は、世界の水準から見れば異常です。欧米では学費は無償か安価で、奨学金も返還義務のない「給付制」が主流です。日本の高等教育機関の私費負担割合は56・9%で、OECD加盟三十カ国中三番目の高さです。

 この原因は、自民党政治が、学生は教育で利益をうけるから学費負担は当然とする“受益者負担”の立場から、国の高等教育への責任を弱め、財政負担を減らしつづけてきたことにあります。政府は、国際人権規約(社会権規約)の「高等教育の漸進的無償化」(第一三条2項C)をいまだに留保しています。こうした国は日本、マダガスカル、ルワンダの三国だけです。

国連の委員会から勧告

 国連社会権規約委員会は二〇〇一年に、日本政府に対して同条項の留保の撤回を勧告し、〇六年六月末までに報告を求めています。政府は、受益者負担主義を捨て、大学の学費値上げを起こさない予算措置を講じるべきです。さらに「高等教育の漸進的無償化」条項の留保を撤回し、高等教育の家計負担を軽減する方向に踏み出すよう強く要求します。



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