日本共産党

2004年12月16日(木)「しんぶん赤旗」

国が拒否の9人にも賠償

北海道じん肺訴訟全面勝訴 札幌高裁

70人和解、5億円支払いへ


 北海道の炭鉱で働き、じん肺になった患者七十九人が国に総額約二十七億円の損害賠償を求めた「北海道石炭じん肺訴訟」控訴審は十五日、札幌高裁(坂本慶一裁判長)で和解協議が行われ、七十人分について、国が総額約五億一千八百万円を支払うなどの内容で和解が成立しました。引き続き、国が和解を拒否した九人分の判決があり、高裁は総額約八千二百万円の支払いを国に命じました。


写真

北海道石炭じん肺訴訟で「国に全面勝利!」を報告する原告の人たち=15日、札幌高裁

 原告団・弁護団は、「わが国じん肺訴訟の歴史の画期」と評価。国は上告することなく、被害者全員に謝罪するように求めました。

 国は、四月の筑豊じん肺最高裁判決が、じん肺防止のため適切な権限を行使しなかった責任を認めたのを受け、同種訴訟で初めて和解。

 九人分については提訴時で賠償請求権が消滅したと主張しましたが、高裁判決は救済範囲を広くとらえました。石炭じん肺で唯一未解決の国家賠償請求集団訴訟は、最初の提訴から十八年で原告側の実質全面勝訴となりました。

 和解は午前十時半からの第八回協議で成立。国は七十人中、一九六○年のじん肺法施行以前の離職者ら九人を除く六十一人に、筑豊最高裁判決の基準に基づいて賠償金を支払うほか、患者・遺族に謝罪し、最新の医学的、専門的知見を踏まえたじん肺対策の検討を約束しました。

 同十一時すぎの判決で、高裁は筑豊最高裁判決を踏まえ、不法行為による損害発生から二十年で賠償請求権が消滅するとした民法の「除斥期間」の起算点を検討。「最終の行政上の決定がなされた日ないしじん肺を原因とする死亡の日」と判断し、じん肺死した九人について、一人当たり二千七百五十万円の慰謝料などの三分の一に、遅延損害金を加えた額を支払うよう国に命じました。


遺族 「生きている間に聞けたら」

 国に和解を拒否され、勝利判決を受けた北海道石炭じん肺訴訟原告団第一次団長・故池田勝美さんの遺族で娘の山田明美さん(57)は「国の責任が問われないのはおかしいと、父は最期まで言いつづけていました。生きている間にこの判決を聞けたら、どんなに喜んだことか。和解が認められなかったことは悔しい。これからもたたかっていきます」と言葉を詰まらせながら語りました。

 原告団の米津英治さん(73)は「九名が帰ってきて、完全勝利と思っております。国に負けることなく、わたしたちは救済、根絶に向かって、一人の脱落者もなくがんばっていきたい」と力を込めました。

 筑豊じん肺訴訟で弁護団長を務めた馬奈木昭雄弁護士は「筑豊と北海道のみなさんのたたかい」と強調。「今日の和解成立は、わたしたちが最高裁で勝ち取った判決の意味を国が認め約束したという、たいへん画期的な意味がある。九人の除斥は国がまともな判断をできなくなっていることを示した。一日も早く反省し、正しい判断に立ちかえるべきです。上告してはならないときびしく迫っていきます」と話しました。


 北海道石炭じん肺訴訟 炭鉱作業で粉じんを吸い、じん肺になった患者三百七十一人(原告は遺族を含め四百五十人)が、国と企業を相手に総額約七十八億円の損害賠償を求めた集団訴訟。一九八六―九八年に提訴され、石炭じん肺訴訟では国内最大規模。

 九九年の一審・札幌地裁は企業に賠償を命じましたが、国の責任は認めませんでした。控訴審では、二○○二年までに原告と企業との和解が成立。最高裁が今年四月、筑豊じん肺訴訟で国の規制権限不行使による賠償責任を認めたことから、国は北海道訴訟での責任も免れないとして和解協議に応じました。現在の原告数は七十九人で、六十三人は遺族。



もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp