日本共産党

2004年12月7日(火)「しんぶん赤旗」

犯罪被害者の人権尊重へ一歩

基本法が全会一致で成立

法的、経済的な支援が不可欠


 犯罪被害者やその家族を支援する犯罪被害者等基本法が一日、国会で成立(全会派一致)し、公布から六カ月以内に施行されます。同法の権利規定は国際人権宣言や被害者団体などが提起する規定に比べると不十分さが残りますが、実効性は今後の具体的施策にかかっており、全体としては一歩前進であり、意義があると評価できます。米田 憲司記者


 同法の成立に関しては、犯罪被害者とその家族の多くが同情はされても、その人間的権利が尊重されてきたとはいい難く、十分な支援を受けられないまま社会で孤立を余儀なくさせられてきた経緯がありました。

日弁連が提言

 日本弁護士連合会(日弁連)は一九九九年十月に「犯罪被害者に対する総合的支援に関する提言」を発表。その趣旨は(1)犯罪被害者基本法を策定し、立法化に向けた取り組みを推進する(2)犯罪被害者の被害回復と支援を目的として、総合的な調査研究など五項目の取り組みを行う――としています。

 被害者は極度の恐怖心、屈辱感、怒り、憎しみ、自己嫌悪、復しゅう心などの心理的状態に陥り、場合によってはPTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こすケースも珍しくありません。犯罪による被害は、人間が人間らしく生きていく権利を意図的に奪われるところに、その本質的な問題があります。

施策実施の責任

 基本法では第三条(基本的理念)で、「すべての犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」としています。そのために国や地方公共団体は、必要な施策を実施する責任を負い、政府は「犯罪被害者等基本計画」を定めなければなりません。

 また、基本的施策としては、(1)相談及び情報の提供(2)損害賠償請求についての援助(3)給付金の支給に係る制度の充実(4)保健医療サービスと福祉サービスの提供(5)安全の確保(6)居住や雇用の安定――となっています。そのために十人の有識者らからなる「犯罪被害者等施策推進会議」を設置することにしています。

 法案審議のなかで日本共産党の吉井英勝衆院議員は、現行の犯罪被害者給付金支給法が社会的連帯や共助の精神という「お見舞い」的考えにたっているが、給付水準の低さ、対象範囲の狭さがあり、被害者の要望に十分に応えきれていないと指摘。その充実改善を求めました。

 推進会議の委員についても被害者代表や弁護士、民間支援者、専門家なども加えて、犯罪被害の意見を施策に反映する必要性を強調しました。

 逆恨みされて妻を殺された元日弁連副会長の岡村勲さん(75)が呼びかけて誕生した「あすの会」(全国犯罪被害者の会)は記者会見で「被害者にお恵みを与える制度が、権利の主体として認められた」と語っています。

 犯罪被害者支援は、欧米の先進国に比べても日本は著しく立ち遅れているのが実情です。政府や自治体もこれからどういう具体的支援を施策として実効化していくかについては、まだはっきりしていません。

 犯罪被害者は加害者からの被害にとどまらず、捜査段階や司法、マスコミ、地域などいろいろなところで第二、第三の被害が生まれています。このため、法的、経済的、メンタル、社会福祉、医療面など総合的な支援が不可欠となっています。



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